ADVENT LIGHTS
& WINTER HOLIDAYS
アドベントを待ち、街中が灯りに包まれる12月。
サンタクロースだけでなく「聖ニコラウス」が登場し、年明けの公現祭までお祝いが続きます。
そんなスロベニアのクリスマスシーズンの過ごし方をご紹介します。
リュブリャナ旧市街のクリスマスイルミネーション
スロベニアでは、11月の最終週〜12月初旬になると、首都リュブリャナをはじめとする各都市でクリスマスイルミネーションが点灯します。
プレシェーレン広場や三本橋の周辺には、星や惑星、宇宙をモチーフにした独創的なライトが飾られ、旧市街全体が一気にホリデーシーズンの空気に包まれます。
カフェや書店、ワインバーもホリデー仕様のデコレーションに衣替え。
「クリスマス商戦」というよりも、“光の点灯を合図に街がゆっくり目覚めていく”ような、どこか儀式的で穏やかな始まり方が印象的です。


リュブリャナ三本橋周辺。川沿いの遊歩道にも屋台やライトが並びます。
スロベニアでは、サンタクロースよりも先にやって来るのが「聖ニコラウス(Miklavž/ミクラウシュ)」。
12月5日の夜、良い子の家にはミクラウシュがやってきて、お菓子やドライフルーツ、小さなプレゼントを置いていきます。
このとき一緒に現れるのが、黒い毛皮と角が特徴の「パルケリ(Parkelj/Krampus)」と天使役。
ミクラウシュは優しく、パルケリは少し怖い存在として描かれ、「よい行い」と「悪い行い」を子どもにそっと伝える伝統行事になっています。
街ではミクラウシュのパレードが行われ、広場にはたくさんの家族連れが集まります。子どもたちにとっては、胸がどきどきするほど楽しみにし、毎年指折り数えて待つ、クリスマスシーズン最大のイベントのひとつです。
聖ニコラウスとパルケリの行進。大人も子どもも楽しみにしている12月の恒例イベントです。
12月に入ると、クリスマス当日までの「アドベント期間」が続きます。
毎週日曜日に1本ずつろうそくを灯すアドベントリースや、窓を開けるたびにお菓子が出てくるアドベントカレンダーなど、“クリスマスを少しずつ楽しむ文化”が暮らしの中に根付いています。
手仕事の品や地元のおやつが中心。
規模はコンパクトですが、そのぶん落ち着いた温かさを感じられるのがスロベニアらしいところです。




川沿いに並ぶ屋台。ホットワインや地元のスイーツの良い香りが漂います。




12月のアドベントマーケットの風景。屋台の明かりと人の賑わいが、冬の街をあたためます。
家庭では、アドベントリースをテーブルに飾り、日曜日ごとにろうそくを1本ずつ灯します。
この時期から、クリスマス当日に向けて少しずつ焼き菓子や伝統的なパウンドケーキ「ポティツァ(Potica)」を仕込み始める家庭も少なくありません。
スロベニアのクリスマスは、華やかなパーティーよりも「家族と静かに過ごす日」というイメージが強い国です。

クリスマス当日は、昼から家族が集まり、食卓を囲んでゆっくりとした時間を過ごします。
ごちそうの内容やワインの選び方は地域や家庭ごとに異なりますが、いずれも「大切な人と穏やかに過ごす日」という点は共通しています。
最も一般的。家族みんなで取り分けて食べます。スロヴェニア全土で食べられている、にんにく・ローズマリー・マジョラムで香りづけしたローストポーク。

カトリックの伝統を大切にする家庭では、クリスマスイヴ(24日)は肉を控え、魚料理を中心にした食卓にすることも。

クリスマスシーズンのスイーツといえば、くるみやケシの実をたっぷり巻き込んだ「ポティツァ(Potica)」と、バタークッキーの盛り合わせ。

12月31日の夜は「シルヴェストロボ(Silvestrovo)」と呼ばれ、再び街がにぎやかになります。
リュブリャナ旧市街の広場では音楽ライブやイベントが行われ、カウントダウンの瞬間には花火が夜空を彩ります。



大晦日の夜、旧市街の上空に打ち上がる花火
新年の朝は、遅めのブランチを家族で囲みながらゆっくりスタート。
豚肉料理や豆の煮込み料理(ヨタ/Jota)など、「縁起が良い」とされる料理を食べる地域もあります。
1月6日の公現祭は、教会歴の上ではクリスマスシーズンの締めくくりの日。
この日を境に、クリスマスツリーやアドベントリースなどの飾りを片付ける家庭が多く、スロベニアの「長いクリスマス」がようやく幕を下ろします。

日本のご家庭でも取り入れやすいように、スロベニアのクリスマスの食卓をイメージした組み合わせをまとめました。
スロベニアの「24日の魚料理」の雰囲気にぐっと近づきます。
外はサクッ、中はとろりのサーモンレアカツなら、お刺身・ステーキ・フライの“いいとこどり”が一皿で楽しめます。
外はサクッ、中はとろりのサーモンレアカツ。
■ 材料(2人分)
・サーモン(刺身用)
・塩・こしょう… 各少々
・小麦粉 → 卵 → 香草パン粉(パン粉+パセリ+粉チーズ)
・揚げ油(少なめの揚げ焼きでOK)
■ 作り方
1)サーモンに塩こしょうをふり、水分をよくふく。
2)小麦粉 → 卵 → 香草パン粉の順に衣をつける。
3)少なめの油で片面1分半ずつ揚げ焼きに。側面は軽く焼く程度でOK。
中がほんのり温かい“レア”で仕上げるのがポイント。
プレーンヨーグルトorサワークリームにレモン汁と少量の塩を混ぜるだけ。
サーモンのレア感を引き立てるのは、タルタルよりも軽やかでシンプルで万能なソースです。
■ 基本レシピ
・パルミジャーノ入りパン粉:コクが増してリッチな仕上がり。
・青のり入りパン粉:レモンとの相性抜群、軽やかで和の香り。
・アボカドわさびディップ:醤油を少し加え、大人のクリスマス向き。
きめ細かな泡と爽やかな酸が、サーモンの甘い脂と香草パン粉の香ばしさをすっと受け止めてくれる。一切れごとにもう一口飲みたくなる、クリスマスイヴにぴったりの辛口スパークリング。
スロベニアでクリスマスと言えば、まず思い浮かぶのがペチェンカ(ローストポーク)。
にんにくとハーブの香りがほんのり広がる、家庭の“ごちそう”です。
香ばしく焼き上げたローストポーク「ペチェンカ」。クリスマスのメイン料理です。
■ 材料(2〜3人分)
・豚肩ロース(塊)… 500〜700g
・にんにく… 2片(すりおろし)
・ローズマリー… ひとつまみ
・マジョラム(あれば)… ひとつまみ
・塩… 小さじ1弱
・こしょう… 少々
・オリーブオイル… 大さじ1
■ 作り方
1)豚肉に塩こしょう、にんにく、ハーブ、オリーブオイルをすり込み30分〜一晩冷蔵庫で寝かす。
2)220℃のオーブンで15分、180℃に下げて40〜50分焼く。
3)そのまま庫内で20分休ませてからスライス。
外は香ばしく、中はしっとり。シンプルだけど深い味わいです。
ペチェンカの香ばしいさと、レフォシュクの
スパイシーな果実味・上質な酸がぴったり重なります。
お肉の後味をすっと整えてくれる、クリスマスディナーにふさわしい赤ワイン。
デザートタイムもワインと一緒に楽しむのが、スロベニア流のクリスマスの過ごし方です。クリスマスシーズンのスイーツといえば、くるみやケシの実をたっぷり巻き込んだポティツァ(Potica)。
本場のポティツァは発酵生地を使う少し手間のかかるお菓子。そこで、くるみ・はちみつ・シナモンで“ポティツァらしさ”をぎゅっと詰め込んだ、「ポティツァ風くるみケーキ」を紹介します。
くるみやケシの実をたっぷり巻き込んだ伝統菓子「ポティツァ」。家庭ごとのレシピが受け継がれます。
■ 材料(パウンド型1本分)
・薄力粉…100g
・くるみ(粗く刻む)…50g
・バター…80g
・砂糖…60g
・はちみつ…大さじ1
・卵…2個
・シナモン…小さじ1/2
・ベーキングパウダー…小さじ1/2
・塩…ほんの少し
■ 作り方
1)室温に戻したバターに砂糖・はちみつを混ぜ、卵を加える。
2)粉類をふるって加え、くるみを混ぜる。
3)パウンド型に流し、170℃で35〜40分。
焼き上がりを少し冷ますと、シナモンとはちみつの香りが際立ちます。
くるみ・はちみつ・シナモンの温かみあるケーキに、シビピノのまろやかな果実味とほどよいタンニンが美しく調和します。 甘すぎないオレンジワインなので、食後の一杯にもぴったりです。
派手なイルミネーションや巨大マーケットよりも、家族や友人との時間を大切にするスロベニアのクリスマスシーズン。
11月末の点灯式から、ミクラウシュの夜、アドベント、静かなクリスマス、にぎやかな大晦日、そして公現祭まで。
クリスマスは「一日だけのイベント」ではなく、喜びを少しずつ育てていく長い季節として、ゆっくりと暮らしの中に溶け込んでいます。
今回ご紹介した料理とワインをヒントに、
ぜひ日本の食卓でも「スロベニア風のクリスマスシーズン」を楽しんでみてください。



