オレンジワイン/ Oranžno vino

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COMPLETE GUIDE TO ORANGE WINE

オレンジワイン
完全ガイド


オレンジワインとは?その起源、定義、製法、ぶどう品種、世界の生産地、そして自然派ワインとの関係までを、わかりやすく解説しています。ここでは、一次・二次資料と現地取材にもとづき、世界で最も詳しく、読んでいて楽しい「オレンジワインの完全ガイド」をお届けします。

オレンジワイン完全ガイド・365wine公式

オレンジワインとは?

白ぶどうを果皮・種と一緒に発酵(醸し/スキンコンタクト/マセレーション)させて造られたワイン。それが「オレンジワイン」です。醸し期間、熟成容器・期間、品種によって、ロゼワインのように様々なカラーバリエーションが楽しめます。そのユニークな味わいから、白・赤・ロゼのどれにも属さない“第4のカテゴリー”として、世界中で注目を集めているジャンルです。

近年では「自然派(ナチュラルワイン)」を象徴する存在として、感度の高い造り手たちが手がけるケースが多く、 日本でも「食に寄り添うワイン」として人気が高まっています。そんな魅惑のオレンジワインを紐解いていきましょう。

スロベニア産のオレンジワイン用の白ぶどうが収穫されて箱に入っている

オレンジワイン7つの誤解

1.「オレンジが原料」

→ 誤解です。オレンジ果実は使っていません。全てのワインの原料は「ぶどう」です。なかでもオレンジワインは、「白ぶどう」の果皮・種を果汁とともに発酵・醸することで造られます。「赤ワイン」のように造られた「白ワイン」のことを「オレンジワイン」と呼びます。 フルーツのオレンジにバツがしてありオレンジワインはオレンジからできているわけではないことを示すイラスト

2.「どれも同じ味」

→ これは大きな誤解です。実際は、ぶどう品種、醸し期間(数日〜数ヶ月)、醸造容器(木樽、ステンレス、アンフォラ、コンクリート)、発酵温度、使用する果皮・種・茎(ステム)の扱い、亜硫酸(SO₂)使用の有無・量など、多くの要素で味わいは異なります。

スロヴェニアを例に挙げると、ワインの酸・ミネラル感の違いでは、ヴィパーヴァ渓谷(Vipava)では風が酸を引き締め、カルスト(Kras)では石灰質の土壌がミネラル感を与えます。アンフォラを使えばスパイスのような香り、木樽なら果皮の苦みの出方が抑えられ、まろやかな丸みをもたらします。また、ハード面だけではなく、造り手によるソフト面からも強く影響を受けるので、生産者ごとに様々な味わいになります。

薄い〜濃い色のワインボトルが並び様々な要因によりオレンジワインはどれも同じ味ではないことを示すイラスト

3.「不味い・飲みにくい」

→ “クセが強くて初心者にはハードルが高い”と思われがちですが、今のオレンジワインは違います。技術の進化と造り手の理念によって、軽やかで食事に合うスタイルが増えています。

特に「自然派ワイン(ナチュラル・ナチュール・オーガニック・ビオワイン・ビオディナミ)」の生産者において、香り・スタイル・飲みやすさを整えたものが多いです。スロヴェニアでは、フレッシュで繊細なタイプから、長期熟成の深みあるタイプまで幅広く、自然派に慣れていない人でも、楽しめるようになっています。

女性がオレンジワインを片手に美味しくないという顔をしているイラスト・オレンジワインはまずい?!

4.「値段が高い」

→ 「オレンジワイン=高額」という固定観念を持つのは誤りです。確かに工場のような量産はできないし、醸し・とりわけ熟成に関しては、リリースまでに膨大な時間を要するため、平均的に価格は高くなりがちです。
昨秋に収穫→翌春に完成するワインとは異なり、赤ワインのように3〜5年、さらに長く8〜10年熟成させるワインもあります。「Time is money」という言葉どおり、手間と時間がかかるプロセスを踏んでいるため、どうしても1本当たりの生産コストがかかってしまうのです。
一方で、短期熟成や軽めのスタイルなら、手頃な価格帯のもの、コストパフォーマンスに優れたものも、数多く登場しています。

オレンジワインのボトルと横にユーロ紙幣、矢印で価格上昇を示すイラスト・オレンジワインは値段が高い

5.「オレンジワイン≒自然派ワイン」

→ オレンジワインと自然派(ナチュラル/オーガニック/ビオディナミ)との親和性は高く、両者が重なるケースも多々あります。

ただし「全てのオレンジワインが自然派である」「自然派だからオレンジワインである」というわけではありません。オレンジワイン=「酸化した白ワイン」や「濁っていて欠陥が多い」と思われるのも自然派に由来しますが、必ずしもそうとも言えません。事実、自然な造り(人為的介入を最小限に、無/少亜硫酸(SO₂)、無濾過など)を実践する生産者も多いです。その反面、SO₂を適度に使い、雑味を抑えるために軽く濾過を行うなどして、清潔で安定した醸造を行う、“クリーンナチュラル/クリーンナチュール” を取る者もいます。添加・無添加、やる・やらないなど、醸造管理レベルは造り手によります。

「自然体だけど清潔でピュアなスタイル」「香りの透明性」これが今、世界中のトップ生産者が目指す方向です。スロヴェニアでも、MOVIA(モヴィア)やBATIČ(バティッチ)、KABAJ(カバイ)のような生産者が、自然派の哲学を受け継ぎながら、洗練された味わいを追求しています。

オレンジワインとグラスがあり、左右に矢印でナチュラルワイン、クリーンナチュラルと表示されているイラスト・オレンジワインイコール自然派ワインではないことを説明している

6.「醸しが長ければ良い/重い」

→ 醸しが長いほど深み・タンニン・色調が強くなりますが、それが必ず「良いワイン」「フルボディ」と評価されるわけではありません。ワインに必要なのは“醸しの長さ”ではなく、“造り手がどんな味を描きたいか”。造り手は目的に応じて醸し期間を設定しています。
例えば、スロヴェニアのブルダ(Goriška Brda)では、短めの醸しでも果皮から程よいタンニン・香りを引き出し、果実味と透明感を活かす造りが増えています。

ワイナリーの男性がオレンジワインが入った2脚のグラス(醸しが短く薄いグラス/醸しが長く濃いグラス)を眺め、生産者の意図することを考えているイラスト・オレンジワインは醸しが長いと良いの?

7.「流行りは終わった」

→ “ただのトレンド”、“数年前に一巡したスタイル”と見るのも誤りです。オレンジワインは、もともと8000年前のジョージア(グルジア)で生まれた伝統・文化です。言うなれば一過性のブームではなく、「人類最古のワイン造りの原点」が現代に蘇ったのです。
スロヴェニア、北イタリア、ジョージアという3つの国がその復興をけん引し、今ではそれが世界各国に広がり、文化として根づきはじめています。オレンジワインの市場調査では、今後10年で1.5倍に拡大すると予測されており(2025年に約6億5千万ドル、2035年に約10億5千万ドルへと成長)、今まさに“成熟と普及”が進む段階にあります。

2025年と10年後の2035年のオレンジワイン市場規模の予測を棒グラフで比較したイラスト

オレンジワインの定義に迫る!

かつては「ルール・定義がない」と言われてきたのがオレンジワインですが、「こうである」という認知が昨今、造り手の間で定まってきました。国際的な生産者の団体 Orange Wine Association/オレンジワイン協会(設立2012年:イタリア・スロヴェニア・ジョージアを筆頭にワイン生産者らが発足)は、オレンジワインを次のように定義しています。


「白ぶどうの果汁を果皮・種とともに、一定の期間、接触させて発酵させたワイン。発酵・熟成において、化学的な物質の添加や濾過を最小限にとどめ、自然なプロセスを尊重するもの」

・天然酵母を使用(=培養ワイン酵母を添加しない)
・発酵段階での冷却はしない
・滓の上で長期熟成をする
・瓶詰め前の濾過をしない
・自然清澄をする

— Orange Wine Association, 2012 Official Definition

ここで重要なのが、「白ぶどうの果汁を果皮・種とともに、一定の期間、接触させて発酵させたワイン」と言うところですどれだけの期間を醸すかは、ぶどう品種や生産者自身の哲学に応じて決定していますが、醸しは同時に発酵を伴っていなければならないというルールがあります。造り手の間で、「本物のオレンジワインとは?」という話題になった時、真っ先に上がるトピックが、【醸し×発酵】です。発酵前浸漬(発酵がはじまる前に果皮を果汁に漬け込む方法)で造られたワインは、果たしてオレンジワインと言えるのか・・・・彼らは首をかしげます。

ワイン生産者の団体オレンジワイン境涯が主催するオレンジワインフェスティバルのロゴマーク 同協会により、オレンジワインの理解と普及を目的に、「Orange wine festival/オレンジワインフェスティバル」が開催。イゾラ(スロヴェニア)とヴィエナ(オーストリア)の2回/年。業者向け展示会、Vinitaly/ヴィニータリー・ヴェローナ(イタリア)でも活動を広めている。

オレンジワインの作り方

〜白を赤のように仕込む〜

ここではオレンジワインの醸造を見ていきましょう。

1.破砕

白ぶどうは収穫・選果(未熟・腐敗果粒を取り除くこと)ののち、スタイルに応じて破砕(軽くつぶすこと)してから果皮・種・実・ジュースごと発酵容器に入れる場合と、破砕を行わずに仕込む場合があります。
破砕(必要に応じて除梗)は、果汁と果皮の接触を早め、抽出が安定しやすいのが利点です。色・香り・タンニンの出方をコントロールしやすく、発酵の立ち上がりもスムーズになります。一方で、破砕せずに全粒、または全房で仕込む手法もあります。果汁がゆっくり滲み出るため抽出はやわらかく、フレッシュなアロマを保ちやすいのが特徴です。全房では茎由来のスパイス感や骨格が加わることもあります。

オレンジワイン作り・破砕・除梗機に収穫後の白ぶどうの房を投入している様子

2.発酵

培養酵母を添加する場合もありますが、多くは野生酵母(自然酵母・天然酵母とも言う)による、自発的な発酵が多いです(=酵母無添加)。流れ出てきた果汁に果皮・種を醸し(=浸漬・マセレーション・マセラシオン※)しながら、発酵を待ちます。この時の発酵容器(ステンレス、木樽、アカシア樽、アンフォラ/クヴェヴリ、コンクリートなど)の選択が、仕上がりのワインのニュアンスに影響します。

※「スキンコンタクト」「マセレーション」「醸し」「浸漬」はいずれも“ぶどうの果皮(スキン)を果汁に漬け込む工程”のこと。英語ではスキンコンタクト/Skin Contact、フランス語ではマセレーション/Maceration、日本語では醸し/かもし、または浸漬/しんしと呼ばれることが多く、表現が違うだけで指している内容はほぼ同じ。日本の伝統的な表現、「醸し」はワインだけでなく日本酒や味噌づくりでも使われる言葉で、「発酵のプロセスを伴いながら風味を引き出すこと」を意味する。赤ワインでは当たり前の工程だが、白ぶどうで行うと果皮から色素やタンニンがワインに移行し、オレンジワイン特有の色や渋み、香りが生まれる。

オレンジワイン作り・醸し・マセレーション工程で木樽の中に果皮ごと醸されている状態のオレンジワインをテイスティング用にグラスに注いだ時の様子

3.醸し

発酵がはじまると、酵母が糖分を代謝して、アルコールと二酸化炭素を発生させます。果房が水面に集まるので、果皮の色素やタンニンなどの成分をより抽出したい場合は、定期的にかい棒や電動式のポンプで循環させます。ひと晩〜数ヶ月。長いと1年ほど醸します。醸しの期間により、短いほどフレッシュで軽い、長いほど複雑で重いワインになる傾向があります。

オレンジワインの作り方・醸した後にプレスして絞った後の搾りかす(ぶどうの皮と種)を片手に取って見せている様子

4.熟成

発酵後も引き続き醸すこともあります。熟成容器は、ステンレス、プラスチック、木樽、アカシア樽、アンフォラ(クヴェヴリ)、コンクリートエッグタンクなどで、後の味わいやスタイルを決定付ける要因となります。醸しと熟成が長いほど、色合いや風味が深まる傾向です。滓(おり・澱)とともにワインを寝かせるシュル・リー製法がとられ、旨味と厚みを引き出す効果が期待できます。

オレンジワイン作り・地下のワインセラーでは沢山のオーク樽が並び、ワインの樽熟成が行われている様子

5.清澄・濾過

ワインの中の不純物を取り除く工程です。清澄では卵白やベントナイトを使う、または自然に沈殿するのを待つ方法があります。濾過もフィルターを用いたり、無濾過もありますが、ほとんどの造り手が清澄・濾過を最小限にとどめています。フィルターをかけているクリアな外観のワインもありますが、自然な濁りが見られるものもあります。濁りは欠陥ではなく生産者の意図するものです。滓には旨味が豊富で、「ワインの個性」とポジティブに捉える人が多いのが現状です。

6.瓶詰め

ワインをボトリングしてコルクやスクリューキャップで打栓します。

7.瓶熟成

ワイナリーのセラーで数ヶ月〜数十年熟成されます。

このプロセスのどこに「正解がある」わけではありません。造り手は独自の哲学とスタイルを貫き、十人十色の収穫時期、醸しの長さ・温度・発酵&熟成容器の材質により、千のスタイルが生まれます。そこに生産者の個性が加味され、「ワイナリーの味」と表現されます。それこそがオレンジワインの最大の魅力=多様性です。


オレンジワインの作り方・醸した白ぶどうを・伝統的な木製のプレス機で今まさに絞ろうとしている様子

オレンジワイン/ロゼワインの違い

見た目は似ていますが、使うぶどうも造り方も根本的に違います。オレンジワインは白ぶどうを、ロゼワインは黒ぶどうを使います。ロゼには4つの製法があり、

�� 赤ワインのように果皮と短期発酵する「セニエ法」
�� 白ワインのようにやさしく搾る「直接圧搾法」
�� 赤と白をブレンドする「調合法」
�� 畑で赤白を混植して醸す「フィールドブレンド」

このうち�,離札縫�法は、オレンジワインの製法と重なる部分があります。つまり、オレンジは「白ぶどうを赤ワインのように」、ロゼは「黒ぶどうを白ワイン/赤ワイン/ブレンドで」仕立てたワインなのです。

2脚のロゼワインとオレンジワインのグラスが並び、それぞれに黒ぶどうと白ぶどうが置かれている・ロゼワインとオレンジワインの違いを示しているイラスト

オレンジワインのぶどう品種は?

オレンジワインの個性は「醸す期間」や「発酵方法」だけでなく、ぶどうそのものの特性に影響されます。ここでは、世界中でオレンジワイン造りによく使われる主要品種を見ていきましょう。

オレンジワインの主要品種

品種 ワインの傾向
ピノ・グリ
(Pinot Gris / Pinot Grigio)
世界中で広く栽培され、オレンジワインでは最も多く使われる国際品種の一つ。果皮の淡いピンク色が醸しによって銅色を生み、熟した果実やスパイス香、柔らかなタンニンを与える。
シャルドネ
(Chardonnay)
各地で安定した品質を誇る万能品種。醸すことでトロピカルフルーツ、ナッツ、ハチミツなどの複雑味が加わる。果皮が厚くないため、軽やかなオレンジに仕上がることが多い。
ソーヴィニヨン・ブラン
(Sauvignon Blanc)
醸しによってハーブ香が和らぎ、柑橘やトロピカルフルーツのアロマにスパイスや出汁のような旨味が加わる。フランス、オーストリア、ニュージーランドなどで例多数。
グリューナー・フェルトリーナー
(Grüner Veltliner)
オーストリアを代表する品種。軽い醸しで白胡椒、ハーブ、リンゴの香りが際立ち、ミネラルを感じる端正なオレンジワインを生む。
ヴィオニエ
(Viognier)
アロマティックな品種で、醸すと杏や花、ジャスミン、紅茶のような複雑な香りに。ボリューム感があり、芳醇でまろやかなスタイルに仕上がる。
セミヨン
(Semillon)
果皮が厚く、醸しに耐性がある。熟成で蜂蜜やナッツ香が出る。シャルドネやソーヴィニヨンとのブレンドでも使われ、しっとりした旨味のあるスタイルに。
ルカツィテリ
(Rkatsiteli)
世界最古の品種の一つで、ジョージア発祥。クヴェヴリ発酵によって強いタンニンとスパイス香を生む。古代から続くオレンジワインの原点的存在。
ゲヴュルツトラミネール
(Gewürztraminer)
香りが非常に華やかで、ライチやローズ、スパイスなどのアロマ。醸すことで甘やかな香りに苦味と旨味が加わり、個性豊かなオレンジワインに。
ヴェルディッキオ
(Verdicchio)
イタリア中部の品種。柑橘とアーモンドの香り。醸すことで旨味と骨格が際立ち、地中海料理との相性が良い。
甲州
(Koshu)
日本原産の代表的品種。果皮が厚くタンニンが適度にあり、軽やかで旨味のあるオレンジに向く。出汁や発酵食品と好相性。
オレンジワイン用のぶどうは、香り・厚み・果皮の性質によって選ばれています。芳香系の品種(ヴィオニエ、ゲヴュルツトラミネール)では香りの広がりを、厚皮の品種(セミヨン、ルカツィテリ)では構造と渋みを、中立的な品種(シャルドネ、ピノグリ)では、より顕著に造り手の個性を表現できます。

日本の"オレンジワイン用のぶどう・甲州のピノグリが実っている様子" 甲州のピノグリ(白ぶどう)

スロヴェニアの
オレンジワイン5大品種

ここでは、スロヴェニアのオレンジワインを支える主要5品種を紹介します。

オレンジワイン用ぶどう TOP5

品種 ワインの傾向
リボッラ・ジャッラ
(Rebula / Ribolla Gialla)
スロヴェニア西部ゴリシュカ・ブルダを代表する品種。柑橘や黄桃、アプリコット、ハーブの香り。酸が美しく、果皮由来のタンニンが繊細な構造を作る。食事に寄り添う透明感が魅力で、スロヴェニアの“オレンジの顔”とも言われる。
マルバジア・イストリアナ
(Malvazija Istarska)
アドリア海沿岸で古くから栽培される芳香品種。熟した洋梨や白い花、ハーブ、蜂蜜の香りを持つ。醸しによってボディに厚みが増し、芳醇で丸みのあるスタイルに。果実味と塩味のバランスが秀逸。
ヴィトフスカ
(Vitovska)
カルスト(Karst)台地特有の石灰質土壌に適応した在来品種。香りは控えめで、ミネラル感と塩味が際立つ。醸すことで紅茶やナッツのニュアンスが加わり、静謐で知的な印象を与える。しなやかで芯のある味わい。
ピノ・グリ
(Sivi Pinot / Pinot Gris)
スロヴェニア全土で栽培される国際品種。果皮のピンク色が銅色を生み、オレンジワインではアプリコットやスパイス、ローストナッツの香りをもたらす。厚みと酸のバランスが良く、飲み心地の滑らかさが特徴。
フリウラーノ
(Jakot / Friulano)
フリウリとの国境地帯で栽培される品種。アーモンドや白桃、ハーブの香り。醸すことで旨味と滑らかなテクスチャーが増し、丸みのある余韻を生む。飲むほどに奥行きを感じる、知的で穏やかな品種。
スロヴェニアのぶどうは、いずれも「果実・酸・ミネラル・塩味」の調和がとれており、オレンジワインになってなるべき品種。世界で高く評価されています。

スロヴェニアの畑で実っている土着品種のレブラ・オレンジワインになる白ぶどうスロヴェニアのレブラ(=レッブーラ、リボッラ・ジャッラ)

オレンジワインの起源

オレンジワインの起源は、約8000年前のジョージアに遡ります。粘土の壺「クヴェヴリ」で果皮ごと発酵させる古代の醸造法が、その原点です。20世紀末、この手法はイタリア北東部フリウリと、国境を接するスロヴェニア西部ゴリシュカ・ブルダで再び息を吹き返しました。伝統を科学的に見つめ直し、自然と人との調和を追求するその姿勢は、やがて“オレンジワイン革命”と呼ばれる潮流を生み出します。
スロヴェニアのぶどう畑シュタイヤルスカを上空から撮影した写真

世界3大オレンジワイン産地

ジョージア・フリウリ・スロヴェニア

ここではオレンジワイン銘醸地をご紹介しましょう。昨今は世界各地で造られていますが、その源流と発展の軸となったのが、この3地域です。いずれも“伝統への敬意と再発見”という共通点をもちながら、気候や文化の違いから独自の個性を育んできました。

世界三大オレンジワイン産地・ジョージア・イタリアのフリウリ・スロヴェニアを地図上で示すイラスト

ジョージア / Georgia

約8000年のワイン造りの歴史を持ち、クヴェヴリ(Qvevri)=アンフォラ、と呼ばれる粘土壺を地中に埋め発酵させる古代製法を継承。オレンジワインの「原点」であり、世界の自然派ワイン文化の精神的なルーツとなっている。土着品種を用い、長期醸し由来のしっかりとしたタンニンと骨格、ドライフルーツやスパイス、紅茶のような風味。野性的で力強く、素朴な旨味が持ち味。最も伝統的で“根源的”。風土や宗教的背景を含む文化性が強く、ワインが「生活そのもの」に根付いている。

ジョージアのオレンジワインに使われるアンフォラ・クヴェブリが並んでいる様子

フリウリ / Friuli−Venezia Giulia, Italy

1990年代後半に古代製法の再発見と現代的再構築が起こり、世界的な潮流を生んだ中心地。ラディコン/グラヴナーらの挑戦が“オレンジワイン”という概念を可視化した。リボッラ・ジャッラやピノ・グリージョの深い抽出と長期熟成。銅色〜飴色、ハーブや薬草、紅茶、熟した果実のニュアンス。複雑で余韻が長く、熟成で円みが出る。思想性が強く、熟成ポテンシャルが高い。味わいに“芸術的構築美”があり、飲む人に哲学を感じさせる。

フリウリのオレンジワイン人気生産者ラディコンのスタンコとグラヴナーのヨスコがアンフォラの前で語っているイラスト

スロヴェニア / Slovenia

フリウリと地続きのプリモルスカ地方(ゴリシュカ・ブルダ、ヴィパーヴァなど)で醸しの伝統が続いてきた。現在は自然派・モダン、両方の造り手が全土で造っている。品種はレブラ(Rebula)、マルバジア、ピノグリを中心に、酸の骨格と塩味が輪郭を整え、蜂蜜やハーブ、柑橘ピールの香り。抽出は産地・生産者ごとに幅があるが、総じてバランスが整っていて、飲み心地の良さが際立つ。スロヴェニアのワイン造りは、“自然との共生精神”に基づいている。ぶどう畑はしばしば森や草花と共存し、畑を「生態系の一部」として尊重する姿勢ある。その結果として生まれるオレンジワインは、静けさと調和を感じさせる味わい。3者の中で最もクリーン&食中向きでありながら、飲む人に“静寂”という余韻を残す。
果皮ごと樽の中で発酵中のワインを手でかき混ぜている様子・スロヴェニアのオレンジワイン・醸しは文化

ジョージア・フリウリ・
スロヴェニアの比較

骨格

ジョージア(渋み・素朴) > フリウリ(抽出・熟成)
> スロヴェニア(酸・ミネラル)

味わいの方向性

ジョージア → 土っぽい旨味+スパイス感
フリウリ → 濃密・複雑・余韻長い
スロヴェニア → クリーン、塩味、食中◎

ペアリングの幅

スロヴェニアが最も広く、次いでフリウリ
ジョージアは発酵・肉・スパイス系に強い

その他のオレンジワイン産地

フランス / France

ロワールやジュラ、アルザスなどで醸しが注目。ピノグリやソーヴィニョンで造られるものが多く、軽やか〜個性派まで。ミネラル感と軽やかさ、オレンジピールの香りが特徴。テロワール重視の洗練された味わいで、ナチュラルワイン文化の厚みを感じる。

ドイツ / Germany

冷涼地のオレンジワインの新しい代表格。リースリングやグラウブルグンダー(ピノグリ)を使い、軽やかでフレッシュな酸をもつスタイルが主流。白茶や青りんごの皮、花のような香りをもち、繊細でモダンな印象。サラダや鶏肉、ハーブ料理などにもよく合う。

オーストリア / Austria

高品質ナチュラルワインの国として知られ、グリューナー・フェルトリーナーやピノグリを用いた醸しワインが増加中。フルーティで香り高く、酸が明瞭でクリーンな造り。構築的で端正なスタイルが多く、伝統とモダンの中間に位置する。

オーストラリア&アメリカ / Australia & USA

新世界の自由な発想を象徴する存在。シャルドネやピノグリなどを用い、果実味を活かしたカジュアルで親しみやすいオレンジワインが多い。カリフォルニアでは酸と旨味のバランスを意識した“クラフト・スタイル”も拡大中。自然派ムーブメントとクラフト文化の融合。

日本 / Japan

甲州、デラウェアなどグリ系・日本固有品種を活かした繊細な造りが多い。山梨・長野・新潟では、果皮由来の旨味と控えめな渋み、出汁のような余韻をもつ、柔らかなオレンジワインが増えている。穏やかな酸と控えめな果実味は和食と抜群の相性。国際的にも評価が高まりつつある。
産地 歴史的背景 主なぶどう品種 味わいの特徴 渋味 酸味 スタイル おすすめ料理
ジョージア ワイン発祥・クヴェヴリ文化 ルカツィテリなど ドライフルーツ、紅茶、スパイス、土の旨味 強 中 力強く素朴 肉料理、発酵料理
フリウリ(伊) 古代製法の再構築・現代オレンジの震源地 リボッラ・ジャッラ、ピノグリ 蜂蜜、薬草、紅茶、複雑で余韻が長い 中〜強 中 重厚・哲学的 熟成チーズ、クリーム系
スロヴェニア 果皮醸しの伝統とモダンの融合 レブラ、マルバジア 柑橘ピール、ハーブ、蜂蜜、ミネラル感 中 高 クリーンで食中向き 魚介、野菜、和食
ドイツ 冷涼産地の新潮流 リースリング、ピノグリ 白茶、リンゴ、花、繊細でフレッシュ 弱〜中 高 フレッシュ・モダン サラダ、鶏肉、ハーブ料理
日本 和食文化との融合・固有品種 甲州、デラウェア 柑橘、出汁、紅茶、やわらかな旨味 弱 中 優しく繊細 和食全般、野菜料理
オーストリア 精緻な醸造文化と自然派の調和 グリューナー・フェルトリーナー他 フルーティで香り高く、酸が明瞭 中 高 端正で構築的 白身魚、前菜
フランス テロワール重視の多様性 ピノ・グリ、ソーヴィニョン・ブランなど ミネラル、オレンジピール、軽やか 中 中 洗練・エレガント フロマージュ、鴨、野菜
豪州・米国 自由な発想とクラフト文化 シャルドネ、ピノ・グリなど 果実味、旨味、柔らかな酸 弱〜中 中 親和性がある・カジュアル BBQ、グリル料理

スロヴェニアが
“オレンジワインの聖地”
と呼ばれる理由

醸しは文化

この一言に、この国のオレンジワインが“聖地”と呼ばれる理由の全てが凝縮されています。単に地理や気候の話ではなく、流行でもありません。「醸し」が文化として根づいている。その背景を3つの側面から見ていきましょう。

�� 歴史と地理の連続性
〜国境を越えて続く文化圏

スロヴェニア西部のプリモルスカ地方は、イタリアのフリウリ地方と国境を接し、長い歴史の中でひとつのワイン文化圏として発展してきました。冷戦期の国境封鎖を経ても、人々の往来と技術交流は絶えることなく続き、オレンジワイン再興の原点となりました。つまり、オレンジワインが「再誕生した場所」であると同時に、「受け継がれてきた場所」でもあるのです (Simon J. Woolf “Amber Revolution” 2018)

フリウリ&スロヴェニア
ワイン産地マップ

イタリアのフリウリとスロヴェニアはひとつのワイン産地だということを示すワインリージョンマップ両国は地続きでひとつのワイン文化圏

�� 自然な醸造哲学の全国的な広がり

スロヴェニアでは、イタリア国境のプリモルスカ地方だけでなく、ポドラウィエやポサウィエといった内陸部でも“醸し”が当たり前の手法として受け継がれています。どの地域でも共通しているのは、培養酵母を使わず、果皮とともに自然発酵させるという伝統的な造り。これは一過性の流行ではなく、世代を超えて息づく文化であり、他の産地との決定的な違いです。

�� 世界が認める品質

スロヴェニアのオレンジワインは、国際的にも高い評価を得ています。英国のワインジャーナリスト、ジェイミー・グッド (Jamie Goode)は、スロヴェニアの造り手ヴィナ・チョタル / Vina Čotar のマルバジア2009を評して、「果皮とともに発酵する白ワインのスタイルが、ここでは本当に機能している/ This is skin-contact white winemaking that really works」と述べました (WineAnorak.com 2015) この発言は、スロヴェニアのオレンジワインが“国内だけの潮流”ではなく、世界に認められた品質であることを物語っています。

こうした歴史・哲学・品質の三位一体によって、スロヴェニアは世界のワインシーンにおける“オレンジワインの聖地”として確固たる地位を築いています。 醸しは文化。この国のワインを象徴する最も美しい言葉です。

ぶどう畑で笑顔でオレンジワインを楽しむスロヴェニア人カップル

スロヴェニアのワイン産地

スロヴェニアは大きく3つのワイン産地(ワインリージョン)に分かれます。プリモルスカ Primorska、ポドラウィエ Podravje、ポサウィエ Posavje。こちらでは3つのリージョンと、9つのサブゾーンを見ていきましょう。

プリモルスカ地方/Primorska

西部、フリウリ(伊)と国境を接するスロヴェニア随一の銘醸地。4つのサブゾーン(ゴリシュカ・ブルダ、ヴィパーヴァ、クラス(カルスト)、イストラ)があり、オレンジワインの中心的エリア。地中海性気候。レブラやマルバジアを中心に、塩味と透明感、果実とミネラルのバランスが見事。

ポドラウィエ地方/Podravje

北東部、オーストリアとの国境に広がる冷涼地。代表産地はシュタイエルスカ Štajerskaとプレックムリエ Prekmurje。白ワインの名産地として知られ、短期醸しによる繊細なオレンジも増加。高酸と花のような香り、リースリングやピノグリが主力。

ポサウィエ地方/Posavje

中央南部の丘陵地帯。小規模生産者が多く、ビゼリスコ、ドレンスカ、ベラクライナの3サブゾーンを含む。日常的に飲まれるフードフレンドリーなオレンジが生まれる地域で、軽やかで優しい味わいが特徴。

スロヴェニア全土のオレンジワイン・リージョンマップ

ゴリシュカ・ブルダ/Goriška Brda

伊・コッリオと地続きの丘陵地帯。石灰質+ポンカ(泥灰質)由来のミネラル。レブラ、マルバジア、ピノグリで、柑橘ピールと蜂蜜、塩味のあるフィニッシュ。短〜中期の醸しでも輪郭がクリーン。上質なバランスを誇る。

ヴィパーヴァ/Vipava

アドリア海からの暖気と山から吹くボーラ(寒風)が出会う渓谷。酸が引き締まり、ハーブやスパイスが香る透明感あるアンバーを生む。クラルニツァなど土着品種の復興も進み、スロヴェニアの“新しい古典”として注目されている。

クラス/Kras・カルスト台地

石灰岩と赤土(テーラ・ロッサ)が織りなす独特のテロワール。鉄分を含むミネラルとタンニンで、力強く銅色を帯びたオレンジワインを生む。長期醸しやアンフォラ熟成とも好相性で、プリモルスカの中でも最も野性的な個性をもつ。

スロヴェニア・イストラ/Slovenska Istra

アドリア海沿岸の温暖な地。マルバジア・イストリアーナの名産地で、トロピカルフルーツやハチミツのような香り、柔らかな酸をもつ。魚介やオリーブオイルと合う、地中海らしい伸びやかな味わいが魅力。

シュタイエルスカ/Štajerska

スロヴェニア北東部の冷涼地帯。起伏が激しく標高差が大きいため昼夜の寒暖差も顕著。短期醸しの黄金色のスタイルが得意で、リースリング、ミュスカ系やピノグリから花、白茶、りんごの繊細なアロマが広がる。酸が美しく、優美なバランスを保つ。

プレックムリエ/Prekmurje

ハンガリー国境に接する最北東部。火山性と沖積土壌が混在し、果実味に明るい華やかさが出る。ラシュキリースリング、ピノグリから香り高く柔らかなスタイルが生まれ、近年は新進生産者による醸しワインも増加中。

ビゼリスコ・シュレミッチ/Bizeljsko–Sremič

ソフトな丘陵地と粘土質土壌。親しみやすい酸と丸みをもつオレンジが多く、ハーブやナッツのニュアンスが穏やかに広がる。

ドレンスカ/Dolenjska

スロヴェニアで最も伝統的なワイン産地のひとつ。家庭的なワイン文化が根付く地域で、白からアンバーまで手仕事の味わいが残る。発酵の香りや旨味が強く、素朴ながら奥深い。

ベラ・クライナ/Bela krajina

クロアチア国境に近い南東部。石灰質土壌で香りが引き締まり、果実味が明るい。白ぶどう主体のエリアで軽やかなオレンジワインも増加。スパイスやハーブ料理とよく合う。

わずか200kmほどの小国ながら、アルプス・アドリア海・パンノニア平原の影響を受け、多様な地形とミクロな気候が存在しています。これこそがスロヴェニアのオレンジワインを、世界でも類を見ない表現豊かなものにしているのです。

スロヴェニアのぶどう畑シュタイヤルスカの秋(黄色く紅葉)

世界でたった1%?!
〜オレンジワインが希少な理由〜

OIV(国際ブドウ・ワイン機構)の統計によると、オレンジワインの世界的な生産量は、ワイン全体の1%未満と推計されています。

オレンジワインの生産比率1%を表す円グラフのイラスト
オレンジワインを明確にカテゴリー化している国はごく少数です。例えばイタリアでは、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のコッリオDOCに、2025年ヴィンテージから、「オレンジワイン」が原産地呼称入りしました。元々、スロヴェニアとの国境に広がる丘陵地帯、ここは赤・白ワインの“原産地呼称”だったのですが、今回はここにオレンジが仲間入りです。ラディコン & グラヴナー率いる同地域が“醸しワイン”の復活と、世界での人気の高まりにおいて中心的な役割を果たしたことで、この度オレンジワインがコッリオDOCへ、醸しの明確な定義が生産者ガイドラインへ加えられました。
揮発酸: 〜20mg/L(=赤ワインと同等)
醸しの期間: 7日間〜
パントンスケール(色見本帳)の使用:
色によるワインの正確なコード化の導入
パントン色調をラベルに表示する
→公平な評価が可能に
ラベル表記: “オレンジワイン”という文言ではなく、マセレーションぶどうから造られたワイン、“Vino da Uve Macerate”もしくは、マセレーションによって得られるワイン、“Vino Ottenuto con Macerazione”とする
2脚のグラスに注がれたオレンジワインの写真・スロヴェニアはオレンジワインの国
ガイドラインの成立をきっかけに、今よりもワイン法が整備され、更なる広がりも期待できるのですが、それはまだ先のお話です。オレンジワインの生産比率は、下記のような理由から、まだまだ低いのが現状です。
  • 醸しの管理や温度コントロールに熟練がいる
  • 発酵・熟成期間が長く、大量生産に不向き
  • 酸化リスクが高く、少量仕込みが中心
  • 市場理解が追いつくまでに時間を要する

そんな中でもスロヴェニアは、面積(=四国ぐらい)と人口210万人の規模からすると、「オレンジワイン」では驚異的な存在感を示しています。

スロヴェニアの年間総生産量:

約80〜90万ヘクトリットル
(=750ml換算で 約1億660万〜1億2,000万本)

ワイン比率:

約70%が白ワイン スロヴェニアの白ワイン比率をぶどうと数字7:3で表現しているイラスト

実態としてのオレンジワイン比率:

その白の多くが発酵を伴う醸しを行っているため、実際には「かなりの割合がオレンジワイン」と言えます。公式統計は「白」とされていますが、専門家の間では「スロヴェニアは世界でもっともオレンジワインが日常的に造られている国」と位置づけられています。 さらに輸出の観点から見ると、スロヴェニアのワイン輸出全体の中で、オレンジワインは 最も国際的に評価が高い分野です。特にイタリア、オーストリア、日本、北欧諸国、アメリカなどへの輸出では「スロヴェニア=オレンジワインの国」というイメージが定着しています。

つまり、世界市場におけるスロヴェニアの存在感は、生産量ではなく「オレンジワインというカテゴリーそのものを牽引する国」として表現するのが正しいのです。1%未満の希少性。それでもオレンジワインが注目されるのは、美味しいだけじゃない、この製法がワインの“原点”に立ち返る哲学的な魅力を宿しているからです。

数名がスロヴェニアのオレンジワインをグラスで乾杯している写真

本物のワインは “自然派” を超えて

今や「自然派ワイン(ナチュラルワイン)」という言葉は世界中で広まり、パリ、ロンドン、ニューヨーク、コペンハーゲン、東京といった都市ではすっかり文化として根づきました。OIV(国際ブドウ・ワイン機構)の2023年の統計によれば、世界的な自然派ワイン生産量はここ10年で約2.4倍に拡大しています。スロヴェニアもその中心にいます。古代ローマ時代からのワイン文化を受け継ぎ、現在では国内生産量の約30〜35%が輸出されています(Slovenian Ministry of Agriculture 2024) その中でも輸出先トップ5は、イタリア・オーストリア・日本・北欧諸国・アメリカです。そして、なんと日本はスロヴェニア産オレンジワインの輸入国として世界第3位にあたります。これは単なる市場データではなく、日本の食文化に根づく発酵・旨味・香りへの感受性が、スロヴェニアの自然派ワインと共鳴していることを示しています。

自然派ワインの神様・ニコラジョリーのぶどう畑の様子

スロヴェニアの「真の自然派」

スロヴェニアでは化学肥料や培養酵母に頼らず、土地固有の菌を重視した醸造を続けてきました。ワイン批評家 ジャンシス・ロビンソンは、Decanter誌の特集でこう述べています。
「スロヴェニアの生産者たちは“流行”ではなく、何世代にもわたり受け継がれてきた“土地の記憶”をワインに映している」
Jancis Robinson 『 Decanter, The Amber Wine Renaissance 2020 』
ワインジャーナリストのジャンシスロビンソンがスロヴェニアのオレンジワインを評価
その言葉の通り、彼らにとって自然派とは“スタイル”ではなく“態度”。ぶどうの力を信じ、人の手は最小限にとどめる。それがこの国に息づくワイン造りの根幹です。同様に、ワインジャーナリストのサイモン・J・ウルフも著書 『 Amber Revolution 2018 』で、「スロヴェニアは“古代の知恵”と“現代の感性”を併せ持つ、真のオレンジワイン文化圏である」と評しています。

アンバーレボリューション(オレンジワイン)著者のサイモンJウルフの写真

「美味しい」と「本物」

自然派ワインの思想を世に広めた造り手、ニコラ・ジョリーはこう語ります。
「ワインは美味しいと言う前に、本物でなければならない。自然派は本物だけれど、本物が必ずしも美味しいとは限らない」
Nicolas Joly 『 Le Vin, du Ciel à la Terre 』
この言葉には、自然と技術のバランスへの深い洞察が込められています。ワインの世界では、自然に任せることが目的ではなく、自然を理解し、そこから“美味しさ”を導き出す努力こそが本質です。今日のスロヴェニアでは、若い造り手たちが最新の微生物学的知識を取り入れつつも、伝統的な甕醸造(アンフォラ/クヴェヴリ)を再評価し、「テロワールの声を聞く」という原点に立ち返っています。それは、本物のワイン=人と自然の調和という思想の実践そのものです。

ぶどう畑で笑顔で働くニコラジョリー・美味しと本物の哲学を語る

“本物”の定義を、今ふたたび

“ナチュラル”という言葉に甘んじることなく、真摯にぶどうと向き合い、技を磨き、自然を尊ぶ造り手。彼らが生み出すワインは、単なる飲み物ではなく、「土地・時間・人の記憶を継ぐ文化」です。世界の丘陵地で、毎年、同じ畑と向き合う造り手たち。彼らの静かな情熱が、グラスの中で琥珀色の輝きとなって息づいています。その一滴こそが、“本物のワイン”の姿なのです。

そして、こうした““本物のワイン”を語るときに欠かせないのが、オレンジワインの存在です。オレンジワインはしばしば自然派(ナチュラルワイン)の象徴とみなされますが、両者はイコールではありません。オレンジはあくまで製法を指し、自然派は哲学を指します。「畑と発酵をできるだけ自然にまかせる」という考え方のもとで、このスタイルが多く選ばれてきた、その重なりこそが本質です。つまりオレンジワインとは、自然派ワインの核心にある“人の手を引き算する”思想を、最も美しく体現したかたちと言えるでしょう。

オレンジワインへの挑戦ー白ぶどうを両手で大切に抱える生産者の手元は泥だらけの写真

最後に

起源や定義、醸しや色合いを越えたところに、オレンジワインの本質があります。それは、自然と向き合いながら生きる造り手たちの哲学そのものです。次はその背景にある思想や価値観を見ていきましょう。

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もっと楽しむ|専門編
オレンジワイン大図鑑【造り手編】

オレンジワイン【参考文献】

※本稿は一次・二次資料および現地関係者への取材をもとに、365wine(株)が独自に編集・再構成したものです。

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オーナー紹介・大野みさき

大野みさき
元ANA国際線CA。ワインを学ぶため渡仏し、ヨーロッパ各地の生産者を訪ね歩く。そこでスロべニアワインの魅力に出会い、帰国後、365wine株式会社を設立。以来、現地の収穫や醸造にも加わり、生産者と共に歩んでいる。ワイン講師、輸入アドバイザー、発酵好きとして、香り・味わい・背景まで含めて「ワインと出会う体験」を届けたいと奮闘する日々。訪問国は47ヶ国。

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