新しいワインの楽しみ方をご紹介します。それは「ぬる燗ワイン」です。燗酒といえば日本酒を想像される方も多いと思いますが、実はワインも温めて楽しむことができます。ホットワインがあるのですからそれもそのはず。なかでも「ぬる燗」は絶妙な温度帯で楽しむ、新しい飲み方の一つとして注目を集めています。
ぬる燗ワインのよいところは、ワインの香りが最大限に広がり、味わい深く、はじめてなのにどこか懐かしい・・・・とりわけ醸したタイプのスロヴェニアワインにおすすめな飲み方です。
今回は【ワイン研究】と題しまして、365wineのスタッフが、徹底的にぬる燗を検証した結果をシェアさせて頂きます!
左から
●GONCグレープアブダクションカンパニー
●GONCハーベストムーン(オレンジ)
●G23ルメニミュシュカオレンジ(にごりオレンジ)
●KABAJシビピノ(オレンジ)
●Sumenjakシャルドネ(オレンジ)
●ZAROビオマルバジア(辛口白)
●HGWノアール(赤)
●Rojacレフォシュク(赤)
フェネグリーク(黄)から時計回りで
クローヴ
アニス
八角
カルダモン
ブラックペッパー
ディル
クコの実
※使い方:各スパイスを各々のワインに入れ温める。
フェネグリーク/2-3粒入れる 聞きなれないですがカレー粉の原料にもなっています。
クローヴ /1粒入れる 世界4大スパイスのひとつ。G撃退に効果覿面。チャイにも必須。
八角(スターアニス) /1片入れる 漢方、中華にも使われる甘く独特な香りです。
カルダモン/木ベラで割って半分入れる スパイスの女王。
ブラックペッパー /1粒入れる スパイスの王様。
ディル/2-3粒入れる ピクルスに欠かせなのがディルシードです。
クコの実(ゴジベリー) /そのまま1-2粒入れる 甘酸っぱいクコの実をワインに入れると、
ホットワインの素 /スロヴェニア産です。シナモン、生姜、クローヴ、八角などのスパイスがブレンドされています。
●GONCグレープアブダクションカンパニーオレンジ
(オレンジ・醸し14日・樽なし)
タンニンが程よくあり、アイスティーと言われているワインですが、温めるとホットティーになりました!(そのまんまです)香りは今回の中で一番よく、温めることで熟したりんごやかりん、あんずの甘やかな香り、金柑やマーマレードジャムのほろ苦さとスパイスの複雑な香りがぶわーーーっと押し寄せます。後味にはほのかな渋みも感じられ、色、香り、味わい、どれをとってもホットティーです。レモンスライスを浮かべてホットレモンティも面白そうです♪しかしながら、45℃を越えると香りと味わいのボリュームが一気に失速します。熱すぎると香りや味が飛んでしまうので、40℃前後が最も適温です。
こちらのぬる燗ワインと合わせたいのが【飲茶】です。飲茶とはご存じ、中国・広東省、香港・マカオで中国茶を飲みながら点心を食べる風習です。蒸篭で蒸したあつあつ、ほかほかの豚まんや焼売を頬張りながらぬる燗オレンジをゴクリ。豚肉の旨味とジューシーさを、ワインの酸がスッキリと流し、いくらでも食べられます。箸休めには素材の味を生かしたチャーシューやザーサイはいかがでしょうか。ワインを温めることはそうそうないので、ぬる燗ワインと飲茶でホームパーティーを開催したら、盛り上がること間違いないです!
●GONCハーベストムーン
(オレンジ・醸し42日・スラボニアン12ヶ月)
今回はスターターセットの小分けパック(80ml)を使用しました。沸騰直前で火を消して、そののままお湯に入れるだけ!(必ず火は消すこと)火傷にも注意しながら実験を進めます。
ハーベルトムーンのもつ枯れたニュアンスが、燗ワインにベストマッチでした!温めることによってこのワインのポテンシャルが遺憾なく発揮されています。65℃まで温度が上がりましたが、熱に耐えることができ、酒質は壊れることはありませんでした。倉庫の室温が低かったため、特に寒い日にはこれくらいの温度まで上げて、楽しみたいところです(本音)
ハーベストムーンと一緒に楽しみたいのが、ジビエや鰻です!鴨、羊、猪など旬にジビエが手に入ったら、鴨鍋、牡丹鍋、ジンギスカンで楽しんでもいいですし、煮込み系のシチューやミートソースを作って、パスタやラザニアもおすすめです。ジビエ独特のクセと濃厚な旨味が、力強いぬる燗ワインとよく合います。また入手しやすい鰻でもOK!炭で焼いた蒲焼を温めなおして粉山椒をパラリ。パンチのある個性派同士ですが、役者が役者を引き立て、見事に調和してくれます!
●G23ルメニミュシュカオレンジ
(オレンジ・醸し24日・仏オーク11ヶ月)
マスカット100%の濁りワインです。温めるとやや酸が強調されるので好き嫌いは分かれるかもしれません。が、これはこれでありです!燗ワインとして十分美味しく楽しめます。ナチュラルさが後押しして、まったりほっこりする味わいです。
●KABAJシビピノ
(オレンジ・醸し10日・仏オーク18ヶ月)
出ました!定番ワイン!燗ワインには絶対に外せない1本です。ぬる燗ワインに迷ったら、まずはシビピノで試してもらいたいです。以前KABAJの生産者ジャンにも飲んでもらったところ、「これは旨い!」と絶賛しておりました。生産者のお墨付きです。それくらいこのワインは燗との相性が良いです。
品種はピノグリ。雑味がなくクリーンな中にも滋味深さがあり、温めることによりワインの素肌さが引き立ちます。20℃の常温から45℃、お好みにより55℃でもよいです。ワインそのものの素晴らしさが実感できます。
ぬる燗のシビピノは、お寿司とどうぞ。貝、白身、青物、赤身とオールマイティにOK!魚介の旨味とワインの旨味が相まって、醤油がシャリを含めてまとめてくれます。一方、塩ならお寿司とワインの両方に感じられるミネラル分が両者を繋いでくれます。ほんのり温もりを感じるお寿司に、ほわっと温かいワインで身も心も和みます♪その他、和食とも相性が良いです。もともとシビピノは醤油と合うワインなので、ぬる燗にしても煮物、照り焼き、焼き鳥などとマッチし美味しく楽しめます。
●Sumenjakシャルドネ
(オレンジ・醸し4日・スラボニアン&古樽12ヶ月)
これちらは温めると酸が立ちすぎました。酸っぱ系です。試すまでは良かろう、美味しかろうと予想していましたが、まさかのNGです。実際にやってみなければ分からないものです。Sumenjakは他にも、リースリング・アルター(ブレンド)とありますが、おそらく結果は似ているのではないかと想像します。しかしやってみなければ分からない。次回は挑戦してみたいと思います!
●ZAROビオマルバジア
(辛口白・醸し一晩・樽なし)
典型的なスロヴェニアの白ワインです。実はそんなに期待していなかったのですが…「これ、いいやん♪」とスタッフ同士顔を見合わせました。酸の上昇も緩やかで、程よいボリュームがあり、ボディがしっかりと支えられています。むしろ温めた方が味わいが濃くなったように感じられ、なんなら温めた方が美味しいとさえ思いました。
また、今回のスパイスの中ではクコの実がいい仕事をしていました。たった1粒のクコの実で果実味が格段にUPし、このワインの魅力が存分に発揮されていました。他にも、レモンや柚子などの柑橘を入れてもよさそうです。スパイス×ワインは新しい発見がありそうです!まだまだ探求の余地あり。想像以上に燗に万能で、面白いワインでした。
このビオマルバジアには、「おでん」はいかがでしょうか。旨味たっぷりの練り物、牛すじ、しゅんだ大根、卵、こんにゃく・・・・ワインには日本酒の古酒のようなニュアンスもあるので、ほんのりと甘味のある出汁が絶妙です。和からしでもいいですが、洋がらし(粒マスタード)が、全体のアクセントとなっておすすめです。
●HGWノワール
(赤・醸し19日・仏オーク&新樽10%12ヶ月)
美味しいのですが、やや還元しているピノノワールです。還元(オフフレーバー)とも呼ばれるこの独特な匂いのするワインをあえて輸入しました。還元は必ずしも悪いものではなく、このニュアンスが好きな方もおられます。特にナチュラルワイン好きに多い傾向です。とはいえ、クセがあるので好き嫌いは分かれます。
温めると還元は消えるのか!?果たして結果は…「消えませんでした!」むしろ強くなった。よほど還元が好きな方(変態)以外はおすすめしません。ならば、どうすればこの匂いは取れるのか!??それは【ワイン研究paet2〜還元編〜】で検証する予定ですのでこちらもお楽しみに♪
●Rojacレフォシュク
(赤・醸し15日・スラボニア&スロべニア樽18ヶ月)
元々レフォシュクは酸の豊かな品種です。酸とタンニンのバランスが素晴らしいワインなのですが、温めるとそのバランスが壊れてしまいました。ただ、ただ酸っぱい!これは温めずに飲んで下さい。それならば、どんな赤ワインが燗に適しているのか。それは・・・・
燗に適した赤ワイン
・酸が中程度までで果実味のあるもの
・ピノノワールなどの薄旨系
・オフフレーバーがないもの
スロヴェニアの地理的な特徴から、どうしても赤ワインのラインナップが少ないため、現時点で365wineには適当な赤がありませんでした。(オレンジワインは充実しています)どうぞ燗に適した赤ワインも見つけてみて下さいね!その時はぜひご一報ください(笑)
お燗は温度ごとに名前が付けられており、その温度帯によって香りや味わいが大きく異なります。20℃の冷やが常温で、そちらを境にそれ以下が冷やすお酒、それ以上が温めるお燗のお酒です。
夏はリーズナブルなスパークリングワインをみぞれ酒に、甘口ワインやアイスワインを雪冷えで。それこそ高級赤ワインは冷やで。燗だと30℃〜60℃以上と幅広いので、秋は人肌燗、真冬は飛びっきり燗と季節やワインの種類、お料理により、温度を変えたら面白そうです。
温度 | 名称 | 風味 |
---|---|---|
0℃ | みぞれ酒 | 口内で温めない限り風味は感じにくい。安価な甘〜やや甘口、シンプルな白、泡を小振りのグラスで。 |
5℃ | 雪冷え | 香りはシャープ。引き締まった酸で味わいはシンプル。貴腐ワイン、カジュアルな泡、夏の白・ロゼに。 |
10℃ | 花冷え | フレッシュな酸、心地よい甘味を引き出してくれる。やや甘口、若い、タンニン控えめのワイン向け。 |
15℃ | 涼冷え | セラー温度。酸、タンニン、甘味、アルコールのバランスが整い、幅広くワインの魅力を発揮。食事と◎ |
20℃ | 冷や | 常温。ありのままのワインが感じられる温度帯。香りも大きく広がり優美な印象。高級赤・オレンジに。 |
30℃ | 日向燗 | ワインの風味がほんのりと立ち、柔らかい口当たりと繊細な香りが楽しめる。ライトボディ向け。 |
35℃ | 人肌燗 | 飲み心地が滑らか、フルーティで柔らかい印象。繊細な味付けの料理や素材の味を生かした料理と◎ |
40℃ | ぬる燗 | 燗の中で最も人気。バランスがよく、ふくよかな旨味、口当たりがまろやか。冬場の食中酒、和食とGOOD! |
45℃ | 上燗 | 旨味、コクのある味わい。温かさが感じられるので、濃い味付けの料理や脂の多い料理に。熟成酒にも。 |
50℃ | 熱燗 | アルコール感がやや強調され力強い味わい。フルボディや古酒に。鰻や濃厚な煮込み料理と相性が良い。 |
55〜 60℃ 以上 |
飛びきり燗 | 熱いため香りよりも味わいが重視。アルコール感が前面に出るので、酒好きや寒い日に。コクや濃厚な旨味がしっかりと感じられ、パワフルなワインや熟成酒に。 |
1.繊細な香りを楽しむなら、30℃〜40℃
2.コクと旨味を楽しむなら、45℃〜50℃
3.味わい深さを楽しむなら、55℃以上
温めることにより、冷たいと感じにくい香りや旨味を引き出します。燗は冬場には体を温める効果があり、日本の気候風土に合った飲み方です。
●温度帯
ワインを燗にする場合、35℃の人肌燗〜が良いです。しかしあまり熱くするとアルコールが飛んでしまうのと、妙にアルコール感が鼻に付き、酸が際立ちます。今回の検証では、65℃から2〜3℃の燗冷ましが最高に美味しかったですが、それはワインによっても、季節によっても変わってきます。色々と試してご自身のお好みの温度帯を探して下さい。
●酒器
50℃前後ならワイングラスで飲めます。香りが広がりやすいのでおすすめです。寒い日には、燗ワインを注いだ瞬間、一気に温度が下がります。冷たいグラスを使う時はその点も考慮してください。
お猪口や湯呑、ティーカップという方もおられるかもしれませんね。特に決まりはありませんので、お気に入りの酒器で気軽にワインを楽しんで下さい。
●燗に適したワイン
クリーンで旨味のあるワインです。オフフレーバーがないものを。攻めたタイプのワインは温めると悪いものが揮発し、雑味をより感じてしまいます。酸は中ぐらいまででまろやかなワイン、強いと酸っぱいです。タンニンが強すぎないワイン。
最後に
ぬる燗ワインは、ただ温めるだけなので簡単です。おまけにワインそのものの味わいを楽しめます。古酒やスパークリングワイン、樽感の強いタイプは引き続き検証しようと思います。ぜひ自分好みの一杯を研究してみて下さい♪