強風Boraが育むテロワール
スロヴェニア西部、海岸沿いのプリモルスカ地方の内陸部、ヴィパーバ村にJamšek(ヤムシェック)は拠点を置きます。ヴィパーバは気候や土壌がワイン造りに適した土地です。南北にヴィパーバ川が流れ連なった渓谷の西側斜面にぶどう畑が広がっています。降雨量は少なく、夏は乾燥して暑く冬は温暖で温度差が比較的少ない地中海性気候です。
ヴィパーバは、アドリア海からの強風Boraの通り道です。Boraは風速150/kmと強いため、この地方ではパラグライダーやハングライダーなどの風を使ったアクティビティが有名です。風が湿気を防ぎカビや腐敗、病気や害虫を寄せ付けません。このエリアでは農薬の使用も最小限で済みます。風で適度にぶどうが冷やされる為、ワインには美しい酸とアロマがのります。
土壌はカルスト台地に広がる石灰質、堆積岩土壌です。石灰で形成された世界最大級のポストイナ鍾乳洞をはじめ、国内には10,000以上もの鍾乳洞が点在しています。水はけの良い土壌が地下水を蓄え、ぶどうは地中深くまで根を下ろします。ミネラルが豊富で凝縮された上質なぶどうに仕上がります。
2015年7月、Jamšekの畑の様子です。強風Boraでぶどう木がしなっています。
Secret wine a journey Vipava(音楽)
Jamšekのこだわり
Jamšekは1887年から続く伝統のあるワインメーカーです。創業当時から使われているアンティークの大樽は今もなお現役で活躍しています。樽に記載されている西暦はJamšek家の古い歴史を物語っています。現在はマルコ・ヤムシェックによってワイナリーは運営されています。マルコの妻エリカも醸造の家系で、2人とも幼い頃から父親の背中を見て育ちました。農学部醸造学科に進学し、キャンパスで出会い恋に落ちて結婚。2つのワインメーカーが1つになり新Jamšekとして再スタートしました。
6haの畑では10種類のぶどうを栽培し、約20,000本のワインが生産されます。畑には食用の牛や豚が放たれている自然な農法です。2017年に訪問した際、カーヴには自家製のハムがワインと同居しているのを見かけました。
有機農法の栽培から醸造に至るまでの全ての工程を手作業で行っています。1本の木から1kg以下の収穫量を守ります。収量が増すと養分が全房に分配され、その分ぶどうの質が落ちるのです。畑はモノポール(単一栽培)を避ける為に、野菜やハーブなどが交互に植えられています。近年、精油用のラベンダーをぶどうの木間に植えました。ワインは土壌の性質やそこに育つ草木のキャラクターがダイレクトに反映されます。ラベンダーがワインの香りや味わいにどのように影響するのかとても楽しみだとエリカは話します。収穫は伝統に則り、家族と友人が総出で1ヶ月間かけて行われます。人や自然に感謝し、ひと房ずつ丁寧に摘まれます。人間とぶどう木の間で目に見えないエネルギーの相互交換が行われると言います。お互いが敬意を表すこの関係は、先祖代々この土地で伝承されてきたものです。
Jamšekはスロヴェニア市場で数々の賞を受賞し、国際的なコンクールでも輝かしい成功を収めています。今後、目が離せない造り手です。
ヴィパーバの紹介(English)
スロヴェニア観光局によるヴィパーバの紹介(Music)