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オーストラリアやニュージーランドでは、 何故スクリューキャップのワインが多いの?



 皆様が疑問に感じていたことだと思います。スクリューキャップを語る前に、スクリューキャップが出現するまでのコルクの歴史を見ていきましょう。

 古代は密閉性を最も誇るものとして、コルクが容器の栓として使われてきました。しかし中世の時代となり、5世紀末のローマ帝国滅亡後から大航海時代の15世紀末までの1000年間は、コルク栓は姿を消します。その原因として、アルコール御法度のイスラム勢力がコルクの産地であるイベリア半島を支配していたので、ヨーロッパ諸国との交易が薄れていたことと、中世は樽自体が容器であり、そもそもワインは熟成させて飲むものでは無かったことから、コルク廃れが続いていました。

 ところが17世紀に入ると、今まで高価であったガラス瓶が安価に作られるようになり、栓としてもガラスより安価なコルクが用いられるようになりました。現在のボトルとコルクの組合せは、イギリスから瞬く間に世界に広がりました。その後、20世紀後半まで、「ワイン界のポスト栓」はコルクが牛耳っていました。

 300年の王座に横槍が入ったのが、1926年のことです。はじめてスクリューキャップがアルコール飲料の栓として起用されました。その後も米国の大手メーカーがスクリューキャップを採用して大成功を収めました。大量生産時代、安価な商品の量産にひと役かわれたのです!1972〜1980年、コルク臭(ブショネ、TCA)の解決を目的に、スイスのワイナリーの半分がスクリューキャップを取り入れました。しかし、この小国のブームでは、スイス国外に広がりを見せることはありませんでした。時同じくして、オーストラリアやニュージーランドでもコルクの品質に悩まされていました。数100年に渡り顧客であるヨーロッパのワイナリーに良質なものを回し、新世界のワイナリーには良いコルクが割り当てられなかったのです。良質なコルクはイベリア半島のものが多く、価格も高い上に、南半球ではコルクを輸入するのに、余計にコストがかかります。

 そこで、コルクに代わる栓の開発が進んだのです。徐々にスクリューキャップを採用するワイナリーが増えはじめて、1970年の終わりには、オーストラリアでは30軒以上のワイナリーがスクリューキャップ採用に踏み切りました。ところが、国内から「安いワインの栓」というイメージによる反対運動が起こり、1980年にはスクリューキャップからコルクに戻る生産者が相次ぎました。

 スクリューキャップ普及の失敗から20年後の2000年に転機が訪れます。折しもコルクショックで世界中のコルクが不足していた時代です。南オーストラリア州クレアヴァレーのリースリング優良生産者13名(ミスターリースリング、ミスタースクリューキャップ)が、クレアヴァレーリースリングイニシアティブという団体を結成しました。翌月以降、発売するリースリングを全てスクリューキャップ仕様にするという発表をしました。転換の理由はコスト削減ではなく、コルク臭の回避であり、スクリューキャップの優れた品質を消費者に訴えかけるというものです。前回の失敗の二の足は踏みません。彼ら自身が自分たちの言葉で伝えたことが吉となり、市場や消費者の厚い支持が得られました。そこに追随した生産者が、どんどんコルク栓からスクリューキャップに転換していきました。


▼消費者に訴えたスクリューキャップの利点
コルク臭なし
ボトル差なし
風味の付与、あるいは除去なし
温度の影響を受けにくい
酸素透過量が少なく長期熟成が可能
耐久性に優れている
開栓、閉栓が容易


 翌年にはその影響がニュージーランドに波及し、2001年にはスクリューキャップワインシールイニシアティブが発足しました。研究数値を基にしたスクリューキャップのメリットを提唱した32の生産者は、市場から大きな賛同を得ました。それから20年が経過しようという現在、オーストラリアとニュージーランドにおけるスクリューキャップの普及率は、驚くことに100%に近い数字です!

 コルクvsスクリューキャップは、生産者と消費者共々で賛否両論を繰り広げていますが、「ワインに対して神経質にならなくて良い、フレンドリー、リスクが低い」の良いところ尽くしだと思います。スクリューキャップ派の大野からしてみれば、あっぱれなサクセスストーリーです。




スクリューキャップの利点


 オーストラリアとニュージーランドで、何故スクリューキャップのワインが多いのか、について言及しました。生産者が消費者に訴えかけたメリットに加筆して、スクリューキャップの利点を9つ、挙げてみたいと思います。

ヽ閉しやすい
TCAコルク臭発生率0%
垂直保管が可能である
ぅ灰襯割れ、吹き出しが起こらない
ゲ硬戮留洞舛鮗けにくい
Ε錺ぅ鵑良味、品質の変化が抑えられる
Д椒肇觝垢覆
┿請覇過量が少なく長期熟成が可能である
耐久性に優れている


それぞれ見ていきましょう。

ヽ閉しやすい ワインオープナーが不要なのでいつでもどこでも誰にでも開閉できます。アウトドアにもお手軽です。

TCAコルク臭発生率0% 原因物質のひとつであるコルクが除外されたので、当然の事ながらブショネにもなりません。ただし、ボトリング前にTCAに汚染されていた場合は別です。

垂直保管が可能である コルクを常に湿らせておく必要がないからです。取扱いも楽です。

ぅ灰襯割れ、吹き出しが起こらない スクリューですもの、言うまでもありませんね。

ゲ硬戮留洞舛鮗けにくい ワインが膨張、伸縮を繰り返し、ため息をつかない(前々回お伝えしました)という事ですね。

Ε錺ぅ鵑良味、品質の変化が抑えられる コルクよりずっと低リスクです。

Д椒肇觝垢覆 ボトリング直後は同じでも、コルクの質(同じロットでも若干の優劣がある)でその後のワインがどのように熟成するか、運命が決まります。

┿請覇過量が少なく熟成が可能である 現在は世界のトップメーカーが、スクリューとコルクで同ビンテージをボトリングして比較検証している最中ですが、熟成は可能だという事がわかっています。(スクリューが世に出てさほど歴史がないので、長熟が可能かを只今、検証中)気密性にも優れており、コルクからスクリューキャップに変えていく生産者もおり、今や高級ワインにも使われています。

耐久性に優れている 天然コルクは自然へと戻ります。丈夫なのは コルク く アルミ です。


 いかがでしたでしょうか。世の中のソムリエ、ソムリエールの腕の見せ所がひとつ減ってしまう!とお叱りを受けそうです。いやいや、パニエ抜栓や神の雫ばりのデキャンティングだけが皆様のお仕事ではありませんよ。分厚いワインリストからお客様の好みのワインを選んで差し上げる、セラーのワイン保管と管理、ワインの提供(グラスの選定、ワインの温度、状態)欠陥ワインの識別、お食事との最高のマリアージュ、演出etc

 スクリューキャップ派ですが、ここまでスクリューの肩を持つと不公平です。だって最近のコルクは現代の技術を余すところなく取り入れており、凄いのですから!ここからはスクリューキャップ出現後のコルクの歴史と最前線についてお話しましょう。


合成コルクの誕生



 17世紀からの300年間は、天然コルクがワイン市場を独占していました。1970年代半ばになると旧世界では安価なプラスチック栓のワインから、やや割高なコルク栓のワインへと消費者の需要がシフトしていきました。また、新世界のオーストラリアや米国では高級ワインの生産が増えはじめ、コルクにニーズが集まりました。その上、競合相手もいないわけですから、完全な売手市場です。コルク原産国であるポルトガルの政情不安により、品質を無視した大量生産が行われ、年々高騰する価格に対しても各方面から不満の声が募っていきました。

 1980年に入って大幅に増えたコルク臭(ブショネ・TCA)も、瞬く間に世に広く知られるようになりました。当然のことながら全てのワインが、3〜5%のコルク臭のリスクを抱えていることも黙認されている時代でした。非を認めないコルクメーカーへの対抗処置として、「合成コルク」が誕生しました。ワインの瓶口を天然コルクが独占していた長い時代は、終わりを告げたのです。

▼合成コルクの利点
コルク臭がない
天然コルクより安価


▼合成コルクの欠点
抜栓、再栓がしにくい
酸素透過量が多い


 プラスチック製の合成コルクは、1990年代半ばには広く受け入れられるようになりました。天然、および合成コルクのデメリットを克服し、最良のものを生み出そうとコルクメーカー各社はテクニカルコルクの開発に乗り出します。


圧搾コルクの実力



 圧搾コルクは、天然コルクやスクリューキャップとは異なり、以前はあまり話題に取り上げられることはありませんでした。しかし、最近はテクニカルコルクの技術が飛躍的に進歩して、今では注目の「栓」として脚光を浴びています。コルクの世界シェアNO.1を誇る、ポルトガルのアモリム社、その売上げの半分近くを圧搾コルクが占めています。それだけ圧搾コルクはメジャーなワイン栓なのです。

 圧搾コルクは細かい粒に加工された天然コルクを接着剤で固めて、その円柱のワインが触れる下部に円形の天然コルクを張り付けて作られます。安価なのが最大の売りですが、最近は高級ワインにも使用されています。同社が1990年代半ばにリリースしたツイントップは、液面だけでなくトップにも天然コルクが貼り付けられていて、打栓時の向きを揃える必要がないという利便性、そしてその見た目から、今や世界で最も売上げている圧搾コルクです。


アモリム社の「ツイントップ」

▼圧搾コルクの利点
微細粒コルク片にハイテク処置を加えてTCAを除去できる
天然コルクを型取った後の余りで作るので低コスト
酸素透過率が一定(=瓶差がない)
ボトリングで天然コルクと同じ瓶や機械が使える
合成コルクよりも抜栓、再栓が容易


▼圧搾コルクの欠点
思い浮かばない



TCAフリー「ディアム」



 従来のコルク粒よりさらに細かい粒を使った、微細圧搾コルクが人気を集めています。フランスのサバテ社が1995年に開発した微細圧搾コルク「アルテック」の改良を重ねて2005年に誕生したのが「ディアム」です。 サバテ(→2003年に名称変更したエネオの子会社ディアム ブシャージュによるもの) 世界中で1年間に生産される瓶詰めワインが200億本なので、そのうちディアムは9%のシェア(18億本)です。


ディアム ブシャージュ社の「ディアム」

 ディアムの製法を簡単に見ていきましょう。6〜12ヶ月乾燥させたコルク樫を熱湯で消毒します。微細粒にして比重計にかけて良質なものを選びます(4割程度が残る)その後、ディアマントによるTCA(ブショネ)除去が行われます。二酸化炭素31.1℃、73バールの圧力をかける特殊な処理(超臨界二酸化炭素)をコルク片に施します。TCAだけでなくその他150種類の不純物が除去されます。(コーヒー豆からカフェインを抜く技術と同じ)そして、発泡剤ミクロ球体、ポリウレタン接着剤、水を混ぜ合わせ(配合率は企業秘密)、型で抜かれて窯に入れられます。仕上げに研磨して表面を整え、長さ別に裁断、シリコンやパラフィンでコーティングして、ワイナリー名がプリントされて出来上がりです。通常の圧搾コルクより6円〜36円/個とやや割高ではありますが、TCAフリー(閾値以下の0.3ppt以下を保証)でブショネのリスクがないのは画期的です。


ディアムの数字

 コルクにはDIAM1、3、5、10、30と5つの数字が刻印されています。これは想定可能熟成年数の目安です。例えばDIAM30と書かれていたら、30年以上の瓶内熟成をメーカーが保証してくれるという意味です。コルク粒の大きさ、配合の割合によって発泡密度が異なり、数字が大きくなると酸素透過率が低くなります(=クオリティが高い)

▼打栓後6ヶ月以降の酸素透過の数値
DIAM1、3、5 → 0.0016mg/日
DIAM10、30 → 0.0008mg/日


 天然コルクとスクリューキャップの良いところ取りをしたディアム。唯一のデメリットが、発泡剤ミクロ球体と接着剤に石油を使っているので、完全にエコロジーではなかったのですが、2017年にはそれらを蜜ろうの乳化剤と植物由来のポリオールに変えた「ディアム オリジン」を開発しました。天然コルクを超える機能性と外観の滑らかな美しさで売上を伸ばしています。

 業界トップのアモリム社も負けずとして、微細圧搾コルク、「ニュートロコルク」(ディアムのような圧縮コルク、発泡剤ミクロ球体不使用)や「ヘリックス」(T字型スクリューキャップ式圧搾コルク)を発売し、その売上げは好調のようです。


アモリム社の「ヘリックス」


天然コルクの利点



 合成コルクメーカー、ヴィンヴェンション社の2016年のデータによると、ワイン栓のシェアは下記の通りです。

天然コルク11%
従来のテクニカルコルク28%
新世代のテクニカルコルク15%(ディアムなど)
合成コルク16%(うち同社ノマコルク14%)
スクリューキャップ29%


 新古を合わせたテクニカルコルク(圧搾コルクなど)が43%で首位をキープ、その後にスクリューキャップが続きます。天然コルクは1番低い数字ですが、メリットを見ていきましょう。

▼天然コルクの4つの利点
―斉霎があるので瓶口に自在にフィットする
⇔票舛淵灰襯の寿命は、長期(30年以上)に渡ってワインの熟成を可能とする
H汗鬚離僖侫ーマンスを楽しむ事ができる
ぬ閉性が高いのにオープナーで容易に抜栓できる


 ではスクリューキャップと比べてみましょう。天然コルクい篭譴景兇譴能颪足しました。スクリューキャップの,犯罎戮燭蕷静イ虜垢任后(多分、田舎のおばあちゃんとかコルクは開けられないと思います 失礼)

▼スクリューキャップの9つの利点
ヽ閉しやすい
TCAコルク臭発生率0%
垂直保管が可能である
ぅ灰襯割れ、吹き出しが起こらない
ゲ硬戮留洞舛鮗けにくい
Ε錺ぅ鵑良味、品質の変化が抑えられる
Д椒肇觝垢覆
┿請覇過量が少なく長期熟成が可能である
耐久性に優れている


 天然コルクのデメリットはスクリューキャップのメリットの反対です。価格も高いしリスキーです。よって他を差し置いて11%のシェアと最下位なのだと察します。私がワイン生産者ならきっと天然コルクは選びません。天然コルクを褒めようと試みたのですが、裏目に出ました。もちろん悪意は毛頭ありません。でも、もしそう思われたら嫌なので、コルクの作り方をご紹介しましょう。


コルクができるまで



 天然コルクはコルク樫の樹皮から作られています。コルク樫が生育するのは、ポルトガル、スペイン、フランス、イタリア、モロッコ、チュニジア、アルジェリアなどの限定されたエリアです。ポルトガルでは世界のコルク樫の半分が育ち、スペインがその次に続きます。



 植樹から25年で樹皮を剥がしますが、この時点では弾力性に欠けるのでワイン用には向きません。それから10年かけて5cmの厚さに成長しますが、2枚目もワイン用としては不向きです。なんと、樹齢45年の3枚目からワイン栓として使われるのです。150〜200年に渡り15回程度(40〜60kg/回)、樹皮を採取され、その後は切られて炭になります。なんという生涯でしょうか。成長したと思ったら皮を剥がされ、それが幾度となく繰り返され、最後は炭になる。人間のために捧げた一生、なんだかコルクにありがたみや感謝の念を抱きはじめました。



 こうして夏場に採取された樹皮は、半年ほど樹液流出と乾燥をさせます。その後、カビや汚染物質を除去するために、90分間煮沸消毒を施します。3週間放置した後に裁断、丸く打ち出され、表面が滑らかに整えられます。そして漂白のために過酸化水素の水溶液に浸されます。昔は塩素系漂白剤が用いられましたが、コルク臭(ブショネ・TCA)の原因となるので、現在は使われていません。最後にグレード分けを目視と機械で行い、ワイナリーの刻印、パラフィンやシリコンでコーティングされて完成です。

 樹皮は非常に丈夫で細胞間の隙間が密に詰まっている構造をしています。不活性なコルク細胞の内部は気体で満たされているので、弾力性に富んでいるので圧縮が可能です。驚く事に一方向から圧力をかけても、他方向に膨らむこともありません。コルクの気密性は高いのですが、微量の酸素交換があり、よってワイン栓となると酸化と還元の平衡状態が保たれます。

 コルク作りは樹の成長を待つことからはじまります。そう、限られた貴重な資源なのです。消費するだけでなく、生み出して行かなければ、新しい未来はありません。そこで皆様にご紹介したいのが、コルクを捨てることなく、収集し、再資源化する、「TOKYO CORK PEROJECT」です。飲食店などのワインが消費される場所に専用BOXを設置します。ワインを愛する東京が、コルクという資源を循環させ、サスティナブルな社会に向けて貢献していこうという取り組みです。詳しくは検索してみて下さい。


ブショネ・TCAとは



 天然コルクの最大の問題であるブショネをご存知でしょうか。ブショネとはTCA(2 4 6-trichroloanisoleトリクロロアニソール)が原因物質であるコルク臭のことです。余談ですが、フランス語でコルク栓を指すブション(bouchon)に元々、鼻と言う意味のネnezを語尾に付けてブショネ bouchonneとなりました。(以下TCA)

 TCAは瓶とコルクの組合せが誕生した17世紀から認知されていましたが、メーカーが研究開発に本腰を入れたのが今世紀に入ってからなので、現在でも天然コルクで打栓されたワインのうち3%程度がTCAに汚染されていると言われています。原因物質の特定がなされたのも、ハンス ターナーによって研究論文が出された1981年のことです。最近ではTCAフリーコルクがリリースされたりして、その分野での研究が進んでいます。では、TCAの発生原因を見ていきましょう。

天然コルク(常在する菌類)
ワインのフェノール(コルクのフェノール含む)
塩素系漂白剤
青カビ


 これらが原因でTCAが発生します。また、1950〜1980年代までコルク樫に散布されていた塩素系殺虫剤の土壌への残留、空気を吸収する樹皮の構造自体が原因となり菌類の増殖を促すと言われています。現在ではコルクの漂白に使う塩素系漂白剤は過酸化水素に取って代わられましたが、未だにTCAが無くならないことから、その問題解決は容易ではないことが伺えます。

 TCAは閾値が極めて低いことでも知られています。僅か3〜5ppt(1ppでオリンピックプール400個に1mlの比率)で感知されます。シンプルなフレッシュタイプの白ワインとタンニンが豊富な樽を使った複雑なオレンジワインとでは、後者の方にマスキング効果があり、閾値は高くなる傾向があります。ただし、「TCAはこれ!」と知覚できるかは、嗅覚に障害がなければ、ある程度、訓練を積めば誰でも体得できます。私も半年かけて大枚を叩いて、毎朝TCAと向き合いました。濡れた段ボールや雑巾などの特有のカビ臭です。濃度を変えたり、使用するワインを変えたり、僅かな量でも感知できるよう練習を重ねました。しかし、そうした学べる場も殆どなく、ソムリエやインポーターなどのプロでも知覚できないので、平気でお店や試飲会で提供していたりします。お客様も気付かず「あまり美味しくないワインだわ」と思われてお終い、といった残念なケースも往々にしてあると思います。ナチュールのお店にてインポーター5人で食事をしていて、私以外TCAに誰も気付かなかった事例もあります。呆れました。抜栓コルクを嗅いだり、品質チェックをしているように見える彼らの行為は、全くもって無意味なのですから!

 TCAに汚染されたワインは欠陥です。発見したら、飲食店、酒販店、インポーター、生産者を通じて、コルクメーカーに報告しなければなりません。それはワイン業界に従事する者の義務だと考えるからです。健全なワインがもっと増えるよう STOP TCA!それには先ず、TCAを知ることが何よりも大切だと思います。


酸素透過率



 すぐに消費するワインなら、栓は何であっても問題ないのですが、数ヶ月あるいは長期熟成させるのであれば、栓の選択は重要です。生産者がどんなスタイルのワインを目指しているかによって、使用する栓に求められるものも変わってきます。どんな栓であろうとも、酸素透過量がワインの香りや味わい、熟成に大きな影響を及ぼします。要はコルクやスクリューキャップを介して通過する酸素の量です。下記はそれぞれの栓の酸素透過量の値です。

スクリューキャップ 0.06〜0.0002mg/日
天然コルク 0.005〜0.0005mg/日
合成コルク 0.002mg/日
テクニカルコルク 0.003mg/日
※メーカーやランクによって全く数値は異なるので、あくまでもこれは目安です。


 天然コルクや合成コルクのように酸素透過率が高ければ、おのずとワインは酸化に傾き、蜂蜜、トースト、傷んだりんご、煮込んだ果実などの酸化に由来する香りが現れます(酸化香・臭)逆に酸素透過率が低いスクリューキャップは、ワインは還元に傾き、茹でた野菜、温泉卵、硫黄、排水溝などの硫化水素の香りが出やすくなります(還元香・臭)

 スクリューキャップシェア率No.1のアムコア社が手掛ける「ステルヴァン」は新たなラインで「ステルヴァン インサイド」を発売しました。4製品あり、0.06〜0.0005mg/日と酸素透過量が選べるのです。また、テクニカルコルク(ディアムの圧搾コルク)、合成コルクに関しても酸素透過量が選択できます。


アムコア社の「ステルヴァン インサイド」

 ボトリングされたワインを良い状態で保つには、ワインを取り巻く環境が大切であることは言うまでもありません。それ以上に良質なコルクである事、さらに言うと同じラインのコルクでも欠陥のない良いものであるかが、その後のワインの運命(=クオリティ、寿命)を決定します。スクリューキャップですら、酸素透過量が選べる時代なのです。今や生産者は自分の造りたいワインのスタイルによって、栓を選べるのです。


コルク栓の最前線



 21世紀初頭にはスクリューキャップに対抗して様々な栓が登場しました。

▼プロコルク・・・天然コルクの両端に5層の膜が貼られたもの
▼ゾーク ・・・プラスチックキャップの内側に合成コルクのスクリューが付いたもの
▼ヴィノロック・・・ガラス栓



「プロコルク」 「ゾーク」 「ヴィノロック」

 現在ではヴィノロック以外は廃れています。こうした「新しい栓」の台頭に危機感を抱いた天然コルクのメーカーは、コルク臭の発生率を減らすために莫大なコストをかけて研究しました。その甲斐あって、TCAの発生率は年々低下していきました。2016年にはメーカー各社が、TCAが閾値以下である事を全量で保証する「ハイグレード天然コルク」の販売をはじめました。

アモリム社の「NDtech」
コルクサプライ社の「DS100+」
M.A.シルヴァ社の「One by One」



「NDtech」 「DS100+」 「One by One」

 ここではアモリム社を取り上げてみましょう。2020年までに同社の天然コルク全てにおいてTCAフリーを目指しています。NDtechはTCAフリーで既に発売されています。同社の他のコルクと比べて15円ほど高いのですが、現在、注文が殺到しているようです。

 TCAなどの問題解決に9億円/年の開発コストが充てられました。屋根付きコンクリートの樹皮保管場所の確保、煮沸洗浄・汚染除去システムの最先端化、供給率アップのための手工業社の買収、各種テクノロジーを駆使してTCA検査の最短化、ライン増設で、年間生産数10億個を目標に掲げています。(2017年で7000万個の生産を達成)また、個体差による酸素透過量のバラツキ(瓶差)もレーザーを使ったスキャニングという新技術を開発中です。供給量を増やすために、コルクの森を拡大させる計画もあります。17世紀から300年続いた天然コルクの時代、ひょっとしたら、もう一度、首位に返り咲く日が訪れるかもしれませんね。今後が楽しみです!!



参考文献:「新しいワインの科学」ジェイミーグッド、ヴィノテーク 「ワインの栓」最前線



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