代表・大野が 3週間かけて現地取材・執筆 した、渾身のスロヴェニア特集。
「自然」「文化」「歴史」「スポーツ」「食」「ワイン」まで、現地の魅力を深く掘り下げた読み応えのあるマガジンです。
この2つに目を通したら、この先は読まなくてもOK!と言ってもいいくらい(笑)
それでは、スロヴェニアという国のこと、ワインのことを、詳しくご紹介していきます!
「スロヴェニア」と耳にし、それがヨーロッパでどこにあるのかを、地図で指し示せる人も、そう多くはないと思います。イタリアの東、オーストリアの南、ハンガリー、クロアチアの西と接する小国です。そして西側の46Kmとわずか一角を、アドリア海に面しています。国土面積20,273平方キロメートル、ちょうど四国ほどの大きさの国です。
スロヴェニアはフランスのボルドー地方と同等の、北緯45度の緯度に位置します。地理的気候がワイン造りに適した土地で、実際にワイナリー数はぶどう農家を含めて28,000軒もあります。
項目 | スロヴェニア | 世界平均/主要国 | 補足・解説 |
---|---|---|---|
ワイン生産面積 | 15,549ヘクタール | 世界:約7,300,000ヘクタール フランス:約792,000ヘクタール |
スロヴェニアは全体の約0.2%規模、小規模生産国 |
小規模生産者の割合 | 0.5ヘクタール以下が80%以上 | フランス:約20%未満 イタリア:中小が多いが平均2〜3ヘクタール |
非常に小規模な家族経営・自然派生産者が中心 |
年間ワイン生産量 | 7,400万リットル | 世界:約2億6,000万hl フランス:約3,800万hl イタリア:約4,400万hl |
世界全体の0.3%以下の規模 |
国内ワイン自給率 | 96% | 世界平均:約85% | 非常に高い自給率で、ほぼ自国内でまかなっている |
年間消費量(1人あたり) | 35.8リットル | 世界:約3.5L フランス:約47L イタリア:約44L アメリカ:約12L |
世界でもトップクラスの消費国 |
ワイン輸入額 | 1,180万ユーロ | 日本:約18億ユーロ ドイツ:約28億ユーロ |
輸入量は少なく、輸入依存度が非常に低い |
ワイン輸出額 | 1,570万ユーロ | フランス:約110億ユーロ イタリア:約80億ユーロ |
小規模ながら輸出超過。ワイン純輸出国 |
※上記の世界データは、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)およびFAOの2021〜2023年の統計に基づいています。
小規模ワイン国家であるスロヴェニアは、世界市場では目立つ存在ではありませんが、自給率が極めて高く、1人あたりの消費量も多いため、国内のワイン文化は非常に豊かです。
特に「80%以上が0.5ヘクタール以下」というデータからも、家族経営の小規模ナチュラルワイン生産者が中心となっている姿が見て取れます。
また、輸出額が輸入額を上回っており、ワインの純輸出国であることもスロヴェニアの特徴です。これは国際的な競争力のある品質と、地域性豊かなワイン造りが支持されていることの表れと言えるでしょう。
スロヴェニアでは、ワイン造りとブドウ栽培は長い歴史と伝統に支えられ、地中海的かつヨーロッパ的なワイン生産国としての文化を形づくってきました。国内には大きく3つの主要産地があり、それぞれ異なる気候とスタイルで個性豊かなワインを生み出しています。
冷涼な気候を活かし、白ワインを中心に多様なスタイルのワインを生産するエリアです。
辛口白ワインやスパークリングワインが豊富で、主な品種にはリースリング、フルミント、ソーヴィニヨン・ブラン、アロマティックなトラミナーやミュスカなどがあります。
スロヴェニアの3地域の中では比較的コンパクトな産地ですが、ライトボディの赤ワインや甘口ワインを多く生産しています。
代表的な黒ブドウはブラウフレンキッシュや、スロヴェニアが誇る古木・ザメトナ・チルニナ(Žametna Črnina)など。
伝統的呼称を持つ「チヴィチェク(Cviček)」や「メチュリスカ・チルニナ」など個性的なワインが造られています。
「海沿い」を意味する名前を持つこの地域は、スロヴェニア国内のワイン生産量の約40%を占める主要産地です。
重めの赤ワインや複雑な白、オレンジワインまで幅広いスタイルが造られます。
代表的な品種には、レフォシュク(Refošk)、メルロー、マルヴァジア、レブラ(Rebula)などがあり、レフォシュクから造られる「テラン(Teran)」は伝統的呼称を持つ赤ワインとして知られています。
スロヴェニアでは、オレンジワインも全国で造られています。
ひと口に「オレンジワイン」と言っても、産地ごとの気候や土壌、品種の違いにより、味わいも多様。
3つの産地それぞれに個性があり、豊かなバリエーションを楽しめるのも魅力のひとつです。
スロヴェニアの3大ワイン産地は、それぞれがさらに細かく14の地区に分類されており、地域ごとの個性や文化が色濃く反映されたワインが造られています。
13世紀写本より:修道士がワインを味見する様子
スロヴェニアでは52種類のぶどうが栽培されています。白ぶどうが37種類で全体の約70%、黒ぶどうが15種類で約30%を占めています。ここでは代表的な品種を、タイプ別にご紹介します。
Malvazija Pinela(Yellowish) Zelen
Saint Laurent Blaufränkisch Refosk(Refosco)
スロヴェニアのワインは2006年まで、ドイツの格付けとよく似た4つのカテゴリーに分類されていました。全てのワインは市場に出る前に公的機関の検査を受け、ZGP(Zasciteno Geografsko Poreklo)のクラスに分類されます。スロヴェニアワインの70%は上位2つの格付け基準を守っています。
スロヴェニアのワイン法はEUの基準に合わせて統一され、現在は以下の2つの大分類に簡素化されています:
・Arhivsko vino(アーカイブワイン):通常3年以上熟成されたワイン。
・Mlado(ノヴォヴィーノ):現行ヴィンテージで、翌年1月末までにリリースされる若飲みワイン。
また、ポサウイェ地方にはPTP(伝統的名称保護)があり、クオリティワインに分類される伝統銘柄があります:
ドイツと同様、完熟ぶどうを用いた甘口ワインには以下のような表示が許可されています(クオリティワイン限定):
地理的表示保護のため、ラベル表記には厳しい法律があり、たとえテーブルワインでも検査分析が義務付けられています。
特に、スロヴェニアではぶどう品種の記載が購入時に重要視されており、テーブルワインを除く全ての格付ワインには、品種とヴィンテージの明記が義務づけられています。
スロヴェニアには、ジョージアやイタリアのフリウリのように、 昔ながらの製法を引き継ぐ自然派の造り手が数多くいます。 人為的な介入を極力避け、伝統を重んじるスタイルです。
もともと赤ワインも白ワインも同じ醸造方法で造られていましたが、 果皮の色の違いから現在では2通りの醸造方法が世界標準になりました。 そんな中、スロヴェニアは知る人ぞ知る「オレンジワインの聖地」。 白ぶどうを用いて赤ワインと同様の手法で造られるワインは、世界中の注目を集めています。
この造り方では、ぶどう果汁と果皮を長期間(1週間〜半年、中には1年)接触させる “スキンコンタクト”が行われます。英語で「マセレーション」、フランス語では「マセラシオン」、 日本語では「醸し(かもし)」と呼ばれるこの工程により、深みのある味わいと色合いが生まれます。
一般的には発酵槽の蓋を開けたまま、好気的な環境下で果帽管理(浮いてきた果皮などをかき混ぜる作業)を行います。 古代の手法を再現する造り手の中には、ジョージア産のアンフォラ(土器)を地中に埋めて 発酵・熟成させるスタイルをとる人もいます。
このタイプのワインでは、醸造中は亜硫酸を使わず、ボトリング前にほんの少量添加するにとどめるのが一般的です。
彼らの哲学は、「最高のワインは、最高のぶどうから」。 完熟かつ健全なぶどうだけを選果し、1本のぶどう木からの収量を1kg以下に抑えるなど、 徹底した手仕事が行われています。
その結果、旨味が豊かでボリューミー、濃厚ながらナチュラルな味わい。 自然派でありながらオフフレーバーがなく、クリーンな印象を持つワインが生まれます。 造り手の個性がワインに反映されているのも大きな魅力です。
スロヴェニアのオレンジワインは、単なるトレンドではなく、 ローカルの文化と哲学を体現した存在として、世界中の専門家やワイン愛好家を魅了しています。
スロヴェニア語 | 日本語の意味 |
---|---|
基本情報 | |
Letnik 2006 | ヴィンテージ 2006 |
Vesbuje sulfit | 亜硫酸の添加 |
St.polnitve:111/5000 | ロットナンバー |
St.odlocbe: 200/LJ | 成分分析表ナンバー |
味の表現 | |
Suho | 辛口 |
Ljubko | 甘口 |
ワインの種類 | |
Rdece vino | 赤ワイン |
Belo vino | 白ワイン |
Penece vino | スパークリングワイン |
表現・あいさつ | |
Na zdravie! | 乾杯! |
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