クラルニツァの復活に人生をかけた男
クラルニツァ/Klarnicaは、スロヴェニアの土着品種の中でも、とても古く珍しい品種です。16世紀に実在したクララ/Klaraという名の美女に由来します。彼女は住み家を囲むように、このぶどうの木を庭に植えました。近所の人達のせんさく好きな目から逃れるため、あるいは数えきれない求婚者から身を隠すためにです。歳月は流れクララの植えたぶどうは、現在はクラルニツァとして知られるようになりました。
1523年の初頭、クラルニツァに関して古い記述が残っています。かつてプリモルスカ地方で広く普及していた品種でしたが、単独使用ではなくブレンド用として使われていました。その後、外来の国際品種の登場でクラルニツァは殆どの畑から姿を消しました。「何とかしてクラルニツァを守りたい!」そんな想いから、当主マコベッツは絶滅の危機から救うべく、多大な苦労を背負いました。畑での10年の時が実を結び、彼の育てたクラルニツァは国から正当な品種として認められます。最初のワインのボトリングは1996年に行われました。彼はクラルニツァに再びスポットライトを浴びせ、その価値を引き出すことに成功しました。


クラルニツァは絶滅に瀕した品種だけあって、全世界で作付け面積が3ha(300m×300m)しかありません。MANSUSともう数社しか所有していない極めて稀な品種のため、スロヴェニア人でも「えっ、クラルニツァあるんだ!」と驚き珍しがります。ヴィパヴア谷が原産でゴリシカブルダ(Goriška brda)やクラス(Kras)でも少しばかりか栽培されています。遅熟なので収穫は11月に入ってから、あるいは天候により、もっと遅い時期に摘まれます。MANSUSのクラルニツァの平均樹齢は30年です。うどんこ病に弱く非常にデリケートな品種なので、栽培が難しいと言われています。ぶどうの果皮が厚いのが特徴で、灰色カビ病(黒ぶどうに発生すると病気とされますが、白ぶどうに発生すると貴腐ワインに欠かせないボトリティスシネリア菌となります)そのおかげで、上質な甘口ワインにもなります。(その場合の収穫時期は翌3月です)
ワイン造りではアカシアで作られた開放型の容器で、果皮ごと21日間醸します。その後、シュールリー(滓とワインを接触させる醸造方法)で、チェリー、アカシア、オークの3種類の小樽で18ヶ月間の熟成を行います。ぶどう本来の風味やテロワールを残すため、フィルターには通さず、上澄み部分だけをボトリングします。繊細でナチュラルなワインに仕上がります。
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