「スロヴェニア」と耳にして、それがヨーロッパのどこにあるかを、地図で指し示す事ができる人もそう多くはないと思います。イタリアの東側、オーストリアの南側、ハンガリーとクロアチアが東側、そして西側の一角である4.8Kmをアドリア海に面する、国土面積20,273平方キロメートルの四国ほどの小国です。
スロヴェニアはフランスのボルドー地方と同じ、北緯45度の緯度に位置します。地理的にも気候がワイン造りに適した土地で、実際に約28,000軒ものワイナリーがあります。ぶどう栽培面積は22,059haで、年間の生産量は900ヘクトリットル(=9億リットル、ちなみに世界の総産出量は2億7900万ヘクトリットルー2014年データ)です。
今から2400年前の紀元前400年頃、現在のスロヴェニアの領土でケルト人によりワイン造りが始まりました。1世紀に入るとローマ人の支配下により、ケルト人のワイン造りは急速に衰退していきます。一方、ローマ帝国の繁栄と共にワイン産業は拡大しました。いくつもの考古学書に、陶器で保管と熟成をさせる独自の方法を生み出したと記されています。
スロヴェニアでは52種類のぶどうが栽培されています。白ぶどうが37種類で全体の70%、黒ぶどうが15種類で30%を占めます。ここでは一部の有名な品種をご紹介しましょう。
《白ぶどう》
・国際品種
シャルドネ、ピノ グリ、ピノ ブラン、リースリング(Renski Rizling)、ソーヴィニョン ブラン(Sauvignon)、ゲベルツ トラミネール(Traminec)、モスカート ビアンコ(Rumeni Muskat)、Rizvanec(ミューラートゥルガル)、ケルナー、ミュスカ オットネル(Muskat Ottonel)、グリューナー シルバネール(Zeleni Silvanec)
・伝統的な土着品種
マルバジア(Malvazija)、Welschriesling(Laski Rizling)、Zeleni sauvignon(Sauvignonass、Tocai Friulano)、フルミント(Sipon)、Ribolla gialla(Rebula)Bouvier、Radgonska ranina(Ranina)
・珍しい固有品種
Zelen、Pinela(Yellowish)、Vitovska Grganja(Vitovska)、Kraljevina、Glera、Klarnica、Rumeni Plavec、Ranfol(Belina)
スロヴェニア第2の都市マリボルには、世界最古の樹齢400年のぶどう木があります。今もなお現役です。
スロヴェニアのワインは2006年までは4つのカテゴリーに分類されていました。ドイツワインの格付けとよく似ています。市場に出る前に全てのワインは公的機関で検査を受け、Zasciteno Geografsko Poreklo(ZGP)のそれぞれのクラスに分けられます。スロヴェニアワインの70%が格付けのクオリティワインとプレミアムクオリティワインの基準を守っています。
・Vrhunsko vino ZGP (プレミアムクオリティワイン) 10%
Vrhはスロヴェニア語で頂点の意。ドイツワインの Q.m.P.に似ている。先ずは、格下のkakovostno ZGPに認定されたのち、厳しい審査を通過する必要がある。 スロヴェニアのワイン生産者組合によって制定された、指定時期の収穫と報告、補糖(スパークリングワインを除く)、補酸、除酸、濃縮果汁の添加は一切禁止などの厳守が義務付けられている。
・Kakovostno ZGP (クオリティワイン) 60%
ドイツワインの Q.b.A.のようなもの。特定のワイン原産地を明記したワインで、各産地では使用可能品種や醸造方法が定められている。産地の個性、ぶどうの品種の個性が表れている。
・Dezelno vino PGO (カントリーワイン)
フランスのVin de pays、ドイツのLandwein、イタリアのIGTと同じような位置付け。輸入ワインを扱う場所での保管や瓶詰は禁止されている。
・Namizno vino (テーブルワイン)
原産地名なし。異なる地方でブレンド可、輸入果汁と国内のワインとのブレンドは禁止。国外のぶどうから造られている場合は、産国をラベルに表記しなければならない。
2006年より、スロヴェニアのワイン法はヨーロッパに統一され、現在は従来の格付けをまとめ、大きく2つのカテゴリーに分けられています。
・Kakovostno vino ZGP (クオリティワイン PSR)
原産地呼称ワインで、以前の品質のピラミッドのトップに位置するVrhunsko vino ZGP (プレミアムクオリティワイン)とKakovostno ZGP(クオリティワイン)。
・Namizno vino (テーブルワイン)
Namizno vino (テーブルワイン)と以前のDezelno vino PGO(カントリーワイン)。スロヴェニア語でmizaはテーブル、namiznoはその形容詞。
その他、Arhivsko vino(Archive wine)は、通常3年以上、法的には熟成が終わっていなくてもリザーブしているワインの呼称です。Mlado(Novo vino)は、現行ヴィンテージのワインの特別な呼称として、そのヴィンテージに続いて1月31日までにマーケットに出すことが許されています。 また、ポサウイェ地方のVino PTPは、伝統的な格付でクオリティワインのカテゴリーに属されます。
・Cvicek PTP
Dolenjska地区のライトボディの赤みがかった白・赤ワインの品種(Zametovka, Kraljevina, Modra frankinja, Laški rizling )。
・Teran PTP
Terra rossa土壌の影響を強く受けた、 Kras地区のRefoškから造られる赤ワイン。
・Metliska crnina PTP
Bela Krajina地区のガメイ、Modra frankinja、Šentlovrenka、 Modra portugalkaをブレンドした赤ワイン。
・Belokranjec PTP
Bela Krajina地区のシャルドネ、ソーヴィニョン、ピノ ブラン、ピノ グリ、Kraljevina、Laški rizling、Zeleni silvanecをブレンドした白ワイン。
甘口ワインは過度に完熟させて造られるので、ドイツのようにプレディカーツワイン(Predicate)と呼ばれ、クオリティワインだけが更に、伝統的にその表記が許されています。
・ Suhi jagodni izbor (貴腐・トロッケンベーレンアウスレーゼ)
・ Ledeno vino (アイスワイン)
・ Vino iz sušenega grozdja (干しぶどうワイン)
・ Jagodni izbor (粒セレクション・ベーレンアウスレーゼ)
・ Izbor (房セレクション・アウスレーゼ)
・ Pozna trgatev (遅摘み・シュペトレーゼ)
地理的原産地呼称を守る為に、ラベル表記も法律で定められています。スロヴェニア国外で造られたワイン以外のテーブルワインも検査分析を必ず通らなければなりません。スロヴェニアでは、ぶどう品種がワイン購入の際に非常に重要となってきます。その為、テーブルワイン以外(Dezelno, Kakovostno、Vrhunsko)はぶどう品種とヴィンテージの表記が法律で定められています。
スロヴェニアのワイン用語
Letnik 2006 | ヴィンテージ 2006 |
Vesbuje sulfit | 亜硫酸の添加 |
St.polnitve:111/5000 | ロットナンバー |
St.odlocbe: 200/LJ | 成分分析表ナンバー |
Suho | 辛口 |
Ljubko | 甘口 |
Rdece vino | 赤ワイン |
Belo vino | 白ワイン |
Penece vino | スパークリングワイン |
Na zdravie! | 乾杯! |