AIやロボットの進化を見ていると、数十年前には漫画やSFの世界だったものが、少しずつ現実に近づいているように感じます。 人間のように見て、考え、動く機械。 では、ワインの世界はどうでしょうか。
AIソムリエ。
AIヴィニュロン。
そんな存在は本当に誕生するのでしょうか。 調べてみると、「いつか」の話どころか、そのために必要な「目・鼻・舌・頭脳」は、すでに研究開発が進んでいました。

2026年9月、アメリカのCornell Universityが発表したのが、HyperBird(ハイパーバード)というシステムです。
普通のカメラが赤・緑・青など、人間にも見える光を記録するのに対し、HyperBirdが使うのはハイパースペクトル画像。 数百もの細かな波長帯を記録します。
すると、人間が葉を見ても「何ともない」ように見える段階で、葉の内部で起きている変化を捉えることができます。
研究チームは、ブドウのうどんこ病やべと病を、目に見える症状が現れる前から検出できるとしています。
しかも、数時間で数百枚もの葉のサンプルを処理できるそうです。
もちろん、今のHyperBirdが畑を一人で歩き回り、何でも判断してくれるわけではありません。 現在は人が葉のサンプルを採取し、装置で調べています。
それでも、「人間には見えないものを見る目」は、今まさにできつつあります。

2025年に発表されたSmartBarrelという研究では、発酵タンクに「電子の鼻」と「電子の舌」にあたるセンサーを取り付け、発酵状態を継続的に測定する仕組みが試されています。
ガスの変化や酸度、糖分、色などを測定し、データを蓄積して発酵の進み方を予測する。 人が何度もタンクからサンプルを採り、確認する仕事の一部を、センサーとAIが担うという試みです。
24時間、変化を見守る醸造所。 そんな未来につながる技術が、研究段階ではすでに動き始めています。

2026年には、イタリアのSonia Freddiらの研究チームが、学術誌 Sensors and Actuators B: Chemical に電子の鼻(e-nose)の研究を発表しました。
人間のように「桃の香り」「花の香り」と感じているわけではありません。 ワインから揮発する化学物質に複数のセンサーが反応し、その組み合わせを機械学習で読み取ります。
研究ではワインの熟成や劣化による変化を追跡。 さらに市販の6種類の白ワインを識別し、特定の解析条件で98%を超える予測精度が報告されました。
「これは○○の香り」ではなく、
「このワインには、特徴的な揮発成分のパターンがある」と見分けているのです。
そして、AIにどれくらいソムリエとしての能力があるのかを調べる SommBench という研究まで登場しました。
ワインの知識、ワインの特徴、料理とのペアリング。 それらの課題を大規模言語モデルに解かせています。
結果が興味深いものでした。 ワインの知識問題では、最も成績のよいモデルで97%の正答率。 一方、ワインの特徴を推測する課題は最高でも65%で、料理とのペアリングも知識問題ほど簡単ではありませんでした。
「知っている」ことと「良いソムリエである」ことは違う。

ソムリエの仕事は、ワインの知識を披露することではありません。
同じ料理でも、誰と食べているのか。 記念日なのか、仕事帰りなのか。 冒険したいのか、今日は失敗したくないのか。
会話から相手を察し、グラスを選び、温度を考え、料理の進み具合を見ながらワインを出す。
ここには、知識の量だけでは測れない能力があります。
人を観察すること。
空気を読むこと。
経験から判断すること。
文化や物語を伝えること。
AIが進化するほど、逆に「人間がやっていた仕事の正体」が見えてくるような気がします。
病気を早く見つけるのはAI。 発酵を24時間監視するのもAI。 気象や畑のデータから判断材料を出すことも、これからますます得意になるでしょう。
でも最終的に、
「今年、この畑のブドウをどんなワインにしたいのか」
を決めるのは誰でしょうか。
そこには効率だけでは決められない、造り手の想い、哲学、好み、そして失敗や成功の記憶があります。
最近よく「AIでなくなる仕事は何か」という話を聞きます。
AIが増えるほど、人間にしかできないことが何か、はっきりしてくる。
テクノロジーが人間から仕事を奪うのではなく、人間が本当に考え、判断し、創造するための時間を戻してくれるものだとしたら……。 ワインの未来は、なかなか面白そうです。
どれだけAIやテクノロジーが進んでも、ワインを造る人の人生まで機械に置き換わるわけではありません。
畑があり、家族があり、季節があり、その年その年の出来事の中でワインは造られていきます。
そんなことを考えていた矢先、嬉しい知らせが届きました。
GÖNCのペーターに第2子が誕生しました!
パパにそっくりの男の子です。
本当におめでとう、ペーター!!

今ごろワイン造りに加えて、2児の父としても大忙しかもしれません。 せっかくなので、祝福の気持ちも込めて、GÖNCのページを覗いてみてください。 グンツらしい、自由で楽しいワインが並んでいます。
気になる1本があれば、ぜひ乾杯のお供に。
ペーターの嬉しいニュースに、乾杯!
1. Cornell University / Cornell Chronicle(2026)
HyperBird spots grape diseases before they're visible
2. Freddi, S. et al.(2026)
Wine discrimination through an electronic nose based on SWCNTs functionalized with Zn phthalocyanine
3. Kontogiannis, S. et al.(2025)
Proposed SmartBarrel System for Monitoring and Assessment of Wine Fermentation Processes Using IoT Nose and Tongue Devices
4. Brach, W. et al.(2026)
SommBench: Assessing Sommelier Expertise of Language Models



