今年4月、ワイン界に、これまで見たことのない5人組が誕生しました。
石田 ピノ 知之
門脇 リースリング 卓史
真田 メルロ 煌生
古川 カベルネ 卓人
松田 シャルドネ 創太郎
ワインと音楽のマリアージュを掲げる男性歌謡グループ「SHiZUKU」です。

メンバーは、それぞれの担当品種を芸名の真ん中に背負い、歌って踊りながらワインエキスパートの資格取得を目指します。 デビュー曲は「秘密のヴィンテージ」。
このニュースを見て、ひとりの男が立ち上がりました。同業のインポーター、オルヴォーに勤める村岡覚さん。 1978年ヴィンテージです。
村岡さんはFacebookに、こう書き込みました。
アイドルが好きで、自分もアイドルになりたかった村岡さん。 別の人から「申し込んでなかったのですか!?」と聞かれると、
どうやら、かなり本気です。芸名も、最初はまともでした。
ペドロ・ヒメネス
スキオペッティーノ
サグランティーノ
ここまでは、まだブドウ品種です。ところが、誰かが「フィロキセラ!」と書き込んだあたりから、雲行きが変わります。
村岡フィロキセラ覚
さらにコメント欄には、ミルデュー、ブショネ、ブレタノミセス、ボトリティス、アセトアルデヒド、果ては「糸引き」まで、次々と新メンバー候補が現れました。
本家がブドウ品種で輝くなら、こちらは病害虫とワインの欠陥で攻める。 もはやライバルグループというより、畑とセラーの要注意リストです。
「それ、汚染系なんですけど。全然キラキラしてないです」
「誰も僕らとワインを飲んでくれなくなりますね」
コメント欄からも、もっともな指摘が入ります。それでも村岡さんは止まりません。
4月のデビューイベントへ行き、6月のプレデビュー公演にも参加。 デビュー曲の振り付けと合いの手を練習し、ついにはAIにSHiZUKUの衣装を着せてもらい、その姿をFacebookのプロフィール写真にしました。

友人から寄せられたコメントは、ひと言。
この短い問いに、すべてが詰まっています。 けれど、村岡さんがSHiZUKUに向ける眼差しは、温かいものでした。
今回、メルマガで紹介したいとお願いすると、快く承諾してくださいました。
ここまで村岡さんを笑っていた私ですが、気づけば自分の芸名も考えていました。
大野マセラシオンみさき
品種は全て丸ごと受け止めます
そしてこの原稿を書きながら、デビュー曲が気になり、YouTubeを開きます。
その瞬間、村岡さんの言葉どおりになっていました。昨日までSHiZUKUを知らなかった人が、今日は歌を聴き、そこでピノ・ノワールやリースリングという名前に出会う。 やがて、その一杯を飲んでみたくなるかもしれません。
産地から入っても、料理から入っても、推しから入ってもいい。 ワインへ続く入口は、多いほど良いです。

SHiZUKUは現在、ライブやワインイベントに加え、ワイナリーで収穫を手伝うプロジェクトにも活動を広げています。
ワインへの入口を増やそうとしているアイドルを見ていたはずが、気づけば私の方が、SHiZUKUの“入口の向こう側”に立っていました。
それではまた。次回はステージの上でお会いしましょう!
産地、料理、推し。
ワインへの入口は、ひとつではありません。



